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『ケセナイキズナ』
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『ケセナイキズナ《中編:Crazy World》』-4

「場所を代わってくれ」
「何かするの?」
「小説を見るんだよ」

 僕は今まで玲奈が座っていた場所に腰掛け、机の上に乗っているノートパソコンの電源を入れる。慣れた手つきでパスワードを入力し、パソコンが起動した。
 このパソコンは起動に少々時間がかかる(正確には、ウィルス対策ソフトが起動時に動き出すため、画面がちゃんと表示されても少しの間放っておく)ので、新しい煙草に火を点け、前の煙草を灰皿に押し当てた。
 煙草を吸い終わる頃に、パソコンが完全に起動する。

「デスクトップのそのフォルダだよ」

 玲奈が指差し、僕は彼女の指示に従いそのフォルダを開いた。
 ワードファイルが十五個あり、その中で一番興味が引かれるファイルを開く。

「それはまだ未完成なの」
「どんなものを書いていたかを知るだけさ」

 ページ数は僅か二十枚。それを流し読みし、ある程度の内容を把握した。

「恋愛小説、か」
「うん。結構泣ける話とか、私達の名前をもじったのとかあって、面白いよ」

 記憶のヒントになるような、日記らしき小説はないのだろうか。
 また適当なファイルを開くが、特に記憶に関するようなものはなかった。

「もう読まないの?」
「あぁ、記憶に関するものはないようだからね」

 玲奈は、ふぅと、息を吐く。

「……ねぇ、少し外に出ない?」
「あぁ……まぁ小腹も空いたし、別にいいよ」


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