『ケセナイキズナ《前編:For Sacred Goddess》』-7
3 綴説《ていせつ》
案内されたのは、高校のときに使っていた弓道場。
僕は弓道部に属し、そしてここで彼女に告白したのだそうだ。
「どうだ、何か思い出せそうか?」
光輝が言う。
「全く」
僕は記憶の引き出しを丁寧に開けながら弓道場を見渡す。
どれもこれも変わっていない。
なるほどね、この記憶は高校の頃の記憶だったわけか。
「ねぇ、涼。本当に何も思い出せないの?」
玲奈が心配と不安が交じり合ったような表情で僕に問う。
「あぁ、全く」
少々冷たい返し方かもしれないが、優しく接せるほどの余裕は僕にはない。
「ここであなたが告白してくれことも?」
「さっきも言っただろ。僕は何も思い出せないよ」
どうやら、これ以上ここにいても何も得られるものはないようだ。
「帰るよ。疲れたし」
「な、おい涼!」
光輝が乱暴に僕の肩を掴んだ。
「本当に何も思い出せないのかよ! 最近の飲み会のこととかも!」
かちっと、何かのスイッチが入った。