『ケセナイキズナ《前編:For Sacred Goddess》』-6
たどり着いたのは、僕の地元の大学だった。
どうやら彼は、本当に僕と玲奈を合わせるらしい……。
光輝は窓を開け、校門の前に女性へと話しかける。
「お待たせいたしました、お嬢様。あなたのご指名であらせられる『瀬上』をお連れしました」
「ご苦労、誉めてつかわそう」
「はっ、ありがたき幸せ」
女性は助手席側に回り込み、窓を叩く。
「もう大丈夫なの、涼?」
「君が、玲奈かい?」
女性は驚いたような表情をした後、「本当なんだ……」と呟いて後部座席へと移った。
「ほら、涼。お前の彼女を一人後ろに乗せるな。お前も移れよ」
彼はなんとなく厭な笑みを浮かべ、そういった。
彼女の機嫌を損なわせるのも嫌なので、僕は後部座席へと移る。当然、彼女とはなんとも言えない微妙な距離を取って。
「さて、何処に行くか。こいつの記憶をなんとかしないといけないしな」
「弓道場でいいじゃん。いつもみたいに」
「じゃあそうするか。涼、玲奈には逆らえないぜ」
光輝はそう言うと、車を急発進させた。
「もっと安全運転を心がけてくれないか?」
「はぁ? いいじゃねぇか別に」
決して良くはないと、僕は心の中で静かに呟いた。