『ケセナイキズナ《前編:For Sacred Goddess》』-10
「大丈夫?」
玲奈は僕を下から覗き込む。
彼女の言葉が胸をえぐる。彼女がこのまま、消えるような気がした。
そう思ったとたんに彼女の存在が、とても希薄に思えた。
少し間違えれば、何もかもが、壊れていくような……そんな存在。
「……玲奈」
「なに?」
悲しそうに微笑んで彼女は言う。
どっ、と心臓が強く慟哭する。
「は……」
体がふらつく。呼吸が乱れる。心が乱れる。何かが僕を縛り付ける。
呪いのような、悲しみ? 哀哭? 何故?
「ちょっと、本当に大丈夫?」
「なんでもないんだ」
駄目だ。いけない。黙れ、心臓。動くな、心。
「ねぇ、涼!」
「玲奈、僕のことはもう……忘れてくれ」
重い体を引きずって、僕は帰路を辿った。
前編:了