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天むす
【片思い 恋愛小説】

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天むす〜後編〜-2

「あ………。」

正真正銘、あの人だった。

「さて、王子様は誰をお探しかな。」

先輩はニヤニヤしながら、私の顔を伺った。

“あの人”はレジの方へと歩いていった。この時点で、私はリストから外れたことになる。そして、向かった先は…

「………うそ。田中先輩!!」

彼は田中先輩に話し掛けたみたいだ。
ということは、不倫相手って……田中先輩だったの!?

「甘いな。田中さんじゃないわよ。」

宮林先輩が言った。

様子を見ていると、田中さんは彼と数秒話した後、裏方に出ていった。誰かを呼びにいったみたいだ。

そして、全ての真相がついに明らかになった。

………………!!

まさか……

朝から少しは感づいていたが、そんな事はないと自分を押し殺していた。

でも……

「店長……だったなんて………」

「どう?ショックだった?」

私は黙ったまま、首を縦に振った。

店長と彼が仲良さげに話をしている。不倫関係は未だに続いているというの!?
私はこの場から金縛りにあったように動けなくなった。すぐにでも逃げ出したいのに、どうしても動けなかった。
それから、すぐ彼は一礼をして帰っていった。裏方にいた私はできるだけ顔を合わせないように下を向きながら作業に打ち込んだ。

バイトが終わった後、私は帰りの電車に乗るために駅のホームでボーっと立っていた。

「後藤さん……ですよね?」

この声は……

「はい………」

あの人だった。私が王子様だと勘違いしていた人……。

「真澄さんから聞きました。裏方で頑張っていらっしゃるんですね。」

「私も……」

何を言おうとしてるんだ…私…でも、止まらない!!

「私も聞きました。店長とのこと…。」

言っちゃった……どうしよう…
彼は少しだけ笑みを見せて口を開いた。

「そうですか……ホント…バカな話ですよね。真澄さんのおかげで事が公にならずに再就職できたというのに…。真澄にもう迷惑はかけられないと思ったのに、僕ったら、また…。」

そうだったんだ……バカだ…ホントにこの人…バカだよ…


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