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天むす
【片思い 恋愛小説】

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天むす〜後編〜-3

「なら、どうして…?どうしてまた店長に近づいたんですか?」

この人の気持ちが解らなかったわけではない。だけど、こんなのって…。

バイトが終わった後、私は先輩にこっそり真実の全てを聞いた。
そこには悲しい物語が秘められていた。

あの人、赤坂幸男さんと店長の吉永真澄さんは同じフローラル三日月の本部社員と店長という役職でありながらも、不倫関係にあった。

とある日、その事実を知ってしまった店長の夫はフローラル三日月に講義しに行った。
そして、会社側が下した決断は当前のごとく二人を引き裂くようなものだった。赤坂幸男さんは会社をクビになり、店長は3ヵ月の謹慎処分となった。

その間に、吉永夫婦には亀裂が生じ、彼女が店に戻ってきた時には吉永真澄は岡本真澄、旧姓に戻っていたそうだ。

「店長もあなたも全てを失ったんです。もう懲りたんじゃないんですか…?」

ゴトンゴトン……ツシィィィィッ…

電車が来た。私は言うだけ言ってこれに乗って帰ろうと足を一歩前に出した。
すると、彼は私の肩をつかんで最後にこう言った。

「それでも……忘れきれないんです……。」

彼はこの電車には乗らなかった。

次の日、定食屋のバイト中、真澄店長が店に来た。驚いた私はあたふたしながら水を運んだ。

「あの…店長…。ご注文が決まり次第お申し付け下さいッ。」

店長は落ち着いていた。

「そんな恐縮しないでよ。お昼のついでにちょっとあなたに話があって来たの。」

客は真澄店長一人だったので、話をするくらい構わなかった。それに、私も店長に聞きたいことがあった。

「話って、何でしょうか…?」

「私達のこと…。宮林さんに聞いたそうね。それで昨日彼に……。」

私は正直にうなずいた。

「聞きました…。」

「そう…。バイトのあなたに余計な心配かけちゃうなんて、私もまだまだね…。私ね、あの人のこと拒んでいるわけじゃないの。」

「え…?」

私は赤坂さんが店長に近づいくことで、店長が迷惑しているのだとばかり思っていた。しかし、現実は……

「でも、受け入れてしまったら、また同じことの繰り返しね。前の夫に合わせる顔がない。」

「それって、どこか矛盾してませんか…?」

私がそう言うと、店長は

「矛盾してるわ。でも、それが恋愛だと思ってる。」

それが恋愛……か……


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