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天むす
【片思い 恋愛小説】

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天むす〜前編〜-4

「ねぇ、なんかあったの?なんかいつも以上にマヌケな顔になってるけど」

この人はやけに勘がいい時があるが、遠慮ってものを知らないのが玉に瑕だ。

「別になんでもないですよ…。あったとしても、先輩には関係ないです。」

そう言うと、先輩はちょっと残念そうな顔をして

「そっか…。せっかくアンタの王子様のこと教えてあげようと思ったのにな。」

と言った。

「王子様……?」

私はなんとなく分かっていながら聞き返した。

「アンタがバイト中によく見つめている黒スーツの王子様だよ。」

「えっ………あっ、先輩見てたんですか。話しますっ…話しますから教えて下さい。」

私はこの先輩にはかなわんなぁと心から思った。しかし、人望かけらもないような宮林先輩がなんで知っているのだろうか、是非知りたいものだ。
私は昨日の一部始終を先輩に話した。

「はーん。こりゃまた運命だとかなんか勘違いモードに入ってたワケね。」

先輩は真剣な私を鼻で笑い、勝ち誇ったような目でこちらを睨んだ。

「あの人はね、2年前までウチの社員だったんだよ。それで、まぁ色々あってさ、クビになっちゃったワケ。」

えっ……

私は一瞬凍りついた。
思った以上にショックだった。あの真面目そうな人がクビだなんて、一体何をしたんだろう。私はさらに気になった。

「な、なんでクビなんかに…?あんな真面目で誠実な方が…。」

私がそう言うと、先輩はニヤけて

「あんな男がクビになるなんて、理由は一つくらいしか思い浮かばないでしょ。答えは社内恋愛の発覚よ。それも、不倫っていうフダ付きのね。」

“ガーーーン”

マンガなどでショックを受けた時によくガーーーンとくる場面があるが、この時のショックは音が出るくらいのガーーーンだった。

信じらんない…

不倫……だなんて……

しかし、これにはさらに私を驚愕させるほどの事実が隠されていたのである。

どうなるの?私…

《つづく》


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