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はるかぜ
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あおあらし-8

「無性に可笑しくなって真っ暗な家で一人笑ってた。雨水の所へ行ったのかなとか、一人で考えて。笑い始めてからしばらくして電話がかかってきたんだ。雨水だった」

春風が緩めていた腕に力を入れて私を抱きしめた。
抵抗する間もなく、春風の胸に顔を押し付けられる。
春風の髪の毛が私の顔にかかって耳元に唇が押し当てられて、本当に囁くような小さな声で春風はその続きを語る。

「さやかが、自殺したって。そう雨水が言った」

春風の体が小刻みに震えていた。
私の心の中に真っ黒な墨汁みたいな液体が入ってきて、心を真っ黒に染めていく。目の前が霞んで目が痛かった。

「その後雨水を罵倒して電話を切った。そんな事あるわけが無いって。すぐに事務所から電話がかかってきてマネージャーが言ったんだ。今回の女の自殺については何も言うなって、マスコミはすぐに嗅ぎ付ける。こっちが何とかするって。それで、本当だって分かった。さやかは雨水に最後にメールをしていた。自分のせいで雨水と俺が仲違いして悪かったって」

春風の涙が私の頬にぽたぽた落ちた。
触れた瞬間はあったかいのにすぐ冷たくなった。

「雨水はそれから俺の所に来て真相を話してくれた。さやかは妊娠していたって。社長とマネージャーが金で解決……堕ろせって言ってそれで帰って来ない俺に相談も出来ずに雨水に相談してたって。俺に捨てられるのが怖かったって……。彼女は分かってたんだ。俺が浮気してたことも、さやかが話せないのを良いことに……好き勝ってしてたってことも。……利用してたんだ、さやかの声を」

春風が言い終わって、嗚咽を繰り返している。
私は春風の顔が見えなかった。
泣いていた。

「春風、春風……」

必死に呼びかけて春風の背中に手を回して抱きついても、春風は返事をしなかった。
終いに私も声をあげて泣いた。


すごくショックだった。

先に動いたのは春風で声を出さずに泣いたまま私の顔の涙を指で拭った。


「嫌いになっただろう?」

春風が鼻にかかった声でたずねてくる。
私は首を振って否定をした。

「良いんだよ、りつ。りつが居なくなって欲しいって言ってくれれば戻るから」

そっと春風から離れて顔を上げる。
ぐしゃぐしゃになった春風の顔。
悲しげで、切なげで、でも、さっきの話は本当なんだろう。


「……今は、何も、言えない」

立ち上がり私はその場を逃げた。
ずるいかも知れないけれど、春風の部屋を出て、走った。

しばらくして立ち止まって振り返る。
追ってこない春風。

また涙が溢れてきた。
泣いたのと走ったのですごく呼吸が苦しい。

私はその場に座り込んで泣いた。


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