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先を生きるもの
【悲恋 恋愛小説】

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先を生きるもの-6

四 思伝



 連れてこられたのは、本当にこいつの家だ。マンションの一室で、部屋は白く清潔感の溢れる部屋だ。玄関には写真がいくつかあった。それはシンプルな風景の写真。そして、靴だなの上には写真立てがあった。その中には男の写真があった。精巧な人形のような美しい顔で、ふんわりと笑っている。アイドルの写真かとも思ったが、そのような感じではないとなんとなく思った。そして、その隣には銀色の髪が空に向かって立っている、外人のような顔立ち男の写真。さらにその隣には、長い黒髪を後ろで結っているメガネをかけている女性。



「田原君、こっちですよ」



 あいつは、俺が中々進まないから、呼びに来たようだ。



「あ……」



 俺が見ていたものに気付いたのか、あいつは寂しそうな瞳で見てきた。

 そして、そのまま俺の目の前にある写真立てを、一つだけ倒した。

 倒したのは、美しい男の写真だけだ。



「こっちです」



 寂しそうな瞳で言うと、俺をリビングへと促した。

 逆らう気も失せているために、こいつの指示に従う



 リビングも玄関と同じく、白で統一されていた。リビングの中央のテーブルにも、また写真立てがあった。

 俺の視線に気付くと、そいつは再び写真立てを倒す。



「さぁ、ここへ座って」



 ソファを指差す。大きくため息をついてそこに座る。



「ひどいですね……誰かと喧嘩でもしたんですか?」

「まさか。あんな一方的なもの喧嘩なわけない」

「その人のことを詳しく聞きたくても、あなたの性格ならたぶん暴力を振るった人のことは言わないでしょうし……まったく」



 何を知っているって言うんだ……。


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