先を生きるもの-18
七 運命は、廻り始める
春が来た。
誰かが言っていた。春は出会いと別れの季節なのだと。
今の俺にとっては、別れの季節以外になにものでもない。
卒業式と同時に、この年で定年する先生や違うところへと赴任する先生たち。まだ外は雪がちらほらと降っていて、寒い。そんな中で、俺は先生を探した。
赤い車に乗っていて、色んな生徒が先生と握手をしていた。
その中には、泣くもの。無理して笑っているもの。
先生の人望の厚さが見て取れた。
車が少し、前へと出る。
「皆さん、ありがとうございました」
先生が皆に感謝を述べた。
ここで、このまま見送るのもいいかもしれない。
でも、このまま見送るだけだったら、いつもと変わらない。
俺は……。
想いよりも先に足が前へ出る。
「先生!」
先生がこちらを振り向く。瞳には大粒の涙。
「俺……絶対に教師になる。絶対に先生を探して見せるから。待っていてくれよ、先生」
「はい……待っていますよ、義一君」
明るくて、優しい笑みを浮かべ、涙を一粒流す。全てが美しくて、俺も涙を流した。
「絶対に……」
「えぇ、絶対です」
ありがとう、先生。俺は……教師になってみせる。
もう、俺は逃げない。真正面から、何もかもにぶつかっていく。
ありがとう。先生……。