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先を生きるもの
【悲恋 恋愛小説】

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先を生きるもの-1

一 到来



 俺が高校三年に上がる頃、新しい教師が赴任してきた。

 それは始業式の日に俺のクラスを任されると紹介されていた。

 遠くからで良くは見えなかったが、童顔で背は低かった。ただ、長い黒髪と、男物の白い上着を羽織っていたことぐらいしか記憶にはなかった。

 いつもの……くだらない教師だと思い、名前を覚えようともしなかった。



 そして、俺たち三年はそのまま新しい教室へと移った。ほとんどが顔見知りで、グループを作って群れていた。俺もその一人なのだが、その群れる行為を好かない俺はどこかこのクラスで浮いていた。



「はい、皆さん席についてくださいね」



 聞きなれない女の声。見れば教卓には、始業式にいた新しい先生がいた。

 男子や女子たちが「かわいい!」、「若い!」など月並みな言葉を発し、皆で先生のご機嫌をとっていた。

 それがまんざらでもないのか、そいつは照れるように出席簿で顔を隠す。

 その動作をすると、またもや皆が「かわいい!」と何度も連呼していた。

 それを俺は冷めた目でしか見ることができなかった。



 どうせ、こいつも同じ。



 教師という名の愚の集合体。自分たちが免許を持っていることをいいことに、自分たちは子に何かを教えられる権利を得たのだと勘違いしたもの。

 そいつは黒板に自分の名前を書き、改めて自己紹介を始めた。興味のかけらもない俺は、机に伏して、このくだらない茶番が終わるのを待った。



 やがて自己紹介が終わったのか、授業が開始された。生徒たちはそれぞれに気だるい声を上げ、仕方なしとでも言うように新しい教科書を開く。こいつの担当科目は数学。俺が最も得意とする科目だ。このような者に教えられなくても、俺は俺なりのやり方で一番を取ってみせる。それが、こいつらに対しての、一番の皮肉になるのだから。


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