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先を生きるもの
【悲恋 恋愛小説】

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先を生きるもの-4

三 夏祭り



 季節は夏へと移り変わった。さすがに生徒たちも多少ながらピリピリしているようで、その雰囲気はどうも嫌だった。

 俺が住んでいる街では、この夏真っ只中の時期に、夏祭りが行われる。それは裏では不良の祭りとも言われている、ある意味での風物詩だ。学校の終わった学生たちが、溜まったストレスを吐き出すかのように暴力を振るいあう。

 まぁ、俺は怖いのでそうならないよう最低限の努力をし、なるべく目につかない格好で友人と出歩く。

 今年もそれに変更はなく、いつもの通り学校が終わった後、上辺だけの友人と共に祭りへと出かけた。

 この街最大の祭りのためか、やはり人は多く、歩いていても肩がぶつかり合う。その度にすみません、と言うのが段々と面倒くさくなり、俺は謝ることすらしなくなった。

 だが、それは、一番やってはいけないことだったようだ。



「おい」

「はっ?」



 と何も言い訳する間もなく俺は殴られた。それでよろめいた俺を、男はそのままずるずると引きずっていった。

 当然上辺だけの友人は俺を助けることなどせず、何か遠いものでも眺めるように俺を見ていた。



 俺もある程度抵抗したが、やはり勝てなかった。場数が違う……。

 男は飽きたのか、俺の財布の中から紙幣を全部ふんだくり、「ち、ガキだな、やっぱ」と妙に腹立つ捨て台詞をはいて、去っていった。



「いてぇ……ガキに金をたかるなよな」



 などと、あいつが居なくなってから文句をこぼして空を眺めた。ここはたぶん裏路地。こういった田舎の名残のある街ではよくある場所だ。こんなところにいたら、また変な奴に絡まれると思い、俺は痛む体に鞭を打ち、立ち上がる。

 すると、それとほぼ同時にぽつぽつと雨が降り出した。



「マジかよ……最悪……」



 今日は傘を持ってきてはいないし、ここから家までは結構な距離がある。やれやれとため息をついた。


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