先を生きるもの-15
「先生……そいつはきっと、そんな風に思って言ったわけじゃないよ」
「義一君……。いいえ、彼は……」
「そいつは……先生のことを愛していたから、そう言ったんだ」
くそ……どうかしているよ。死んだとは言っても、恋敵のフォローをするなんて。
「先生を苦しめようとして言ったわけじゃないよ。先生は忘れていないじゃないか。だから……大丈夫だよ」
「ダメです……。私は……」
先生に寄り添った。そしてそっと抱く。
「大丈夫だよ……先生。俺がいるから。俺が……先生を愛してみせる。俺はそいつみたく先に死なない。そいつが愛せなかった分、俺が存分に愛してあげるから」
「ダメ……」
先生は顔を上げる。たぶん、先生の瞳には俺が映っていない。ここにいるのはあいつだ。あいつと俺がかぶっているに違いない。
それでも。俺は……。
「愛しているから……」
とても自然に唇と唇を重ねた。それに抵抗するでもなく、せんせいは身を委ねる。
「ごめん……なさい。まーちゃん……」
畜生……先生の……一番大事なものを、あいつは持って行きやがった。たった一つしかないものを……あいつは……。
「先生……」
そして、その夜。俺は先生と夜を初めて共にすることになった。