投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

先を生きるもの
【悲恋 恋愛小説】

先を生きるものの最初へ 先を生きるもの 14 先を生きるもの 16 先を生きるものの最後へ

先を生きるもの-15

「先生……そいつはきっと、そんな風に思って言ったわけじゃないよ」

「義一君……。いいえ、彼は……」

「そいつは……先生のことを愛していたから、そう言ったんだ」



 くそ……どうかしているよ。死んだとは言っても、恋敵のフォローをするなんて。



「先生を苦しめようとして言ったわけじゃないよ。先生は忘れていないじゃないか。だから……大丈夫だよ」

「ダメです……。私は……」



 先生に寄り添った。そしてそっと抱く。



「大丈夫だよ……先生。俺がいるから。俺が……先生を愛してみせる。俺はそいつみたく先に死なない。そいつが愛せなかった分、俺が存分に愛してあげるから」

「ダメ……」



 先生は顔を上げる。たぶん、先生の瞳には俺が映っていない。ここにいるのはあいつだ。あいつと俺がかぶっているに違いない。

 それでも。俺は……。



「愛しているから……」



 とても自然に唇と唇を重ねた。それに抵抗するでもなく、せんせいは身を委ねる。



「ごめん……なさい。まーちゃん……」



 畜生……先生の……一番大事なものを、あいつは持って行きやがった。たった一つしかないものを……あいつは……。



「先生……」



 そして、その夜。俺は先生と夜を初めて共にすることになった。


先を生きるものの最初へ 先を生きるもの 14 先を生きるもの 16 先を生きるものの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前