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先を生きるもの
【悲恋 恋愛小説】

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先を生きるもの-14

「それも含めて、話ますね。今日は……少し話したい気分なんです」



 お茶を持ってくる。

 そして先生は俺と向かい合うように座った。



「彼は……『二階堂 正和《にかいどう まさかず》』は、私が昔好きだった人です」



 覚悟はしていたが、まさか本当とはな……。

 先生は写真立てを手に取る。



「私がまだ大学生だった頃に、マンションの隣の部屋に住んでいたんです。この写真の通り、とても美しかった」



 先生は話し出した。昔の話を。

 時々涙ぐみそうになったり、懐かしむように微笑んだり……それを見ているだけで、こいつとの生活が満たされていたことがわかる。



「でも……彼は亡くなってしまいました。病名は『Unknown Sick』。今までに彼しかなったことのない、未知の病です」



 そんな病名聞いたことがないな……。



「亡くなる直前に、彼は私に呪いの言葉を残しました」



 その言葉にはずしりと重いものが感じられる。



「彼は最後に、『忘れないで』と、私に呪いを残したんです」



 とうとう先生は泣き出してしまった。

 涙を流しながら、写真を額に当て、何かを懺悔するように。何かを謝るように。



「私は……彼を忘れていてはいけないんです。彼以外愛してはいけない。彼以外を愛してしまっては、私は私ではなくなってしまうから。あの頃の彼に嘘をついてしまうことになるから。私は……」

「先生……?」

「それが……彼の呪い。想い」

「それは……違うよ」



 あいつをフォローする気は更々ない。でも……先生はこいつのせいで苦しんでいる。きっと、あいつが死んでから先生は苦しみ抜いた。そして、ここまで来たんだ。


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