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先を生きるもの
【悲恋 恋愛小説】

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先を生きるもの-12

五 願始



 それからというもの、俺は先生の担当する授業には特に力を入れた。あれ以来俺は上辺だけだった友人にもなるべく積極的に交流した。

 それを驚いていたものの、皆は受け入れてくれた。

 それがたまらなく嬉しかったのは言うまでもない。今では馬鹿なことをやっては大声で笑いあえるような関係にもなった。



「こら、あんまり騒いではいけませんよ」



 先生が少々困ったような顔で言う。



「いいじゃんよ、先生」



 一人の友人『平田』が言った。



「いけませんよ。義一君、あなたもいつまでも騒いでいてはいけません。あなた達の教室は職員室にとても近いのですから」



 先生の言ったとおり、俺たちの教室は職員室がすぐ近くにある。それだけで、いかに俺たちのクラスが期待されているかがわかってしまう。

 それをプレッシャーだと言う者も多いが、今になっては俺には先生に会えるから丁度いい。



「悪かったよ、先生。次から気をつける」



 俺は軽く謝って教室内へと逃げ込んだ。



「お前、先生と仲良いんだな?」



 平田がにやにやしている。



「なんでだよ?」

「だって、名前で呼ばれてんじゃん」

「単にそっちのほうが覚えやすかったんだろ?」

「ははは、意外と狙われていたりしてな?」



 平田は笑いながら言うが、図星を突かれたような感覚に陥った。

 俺はよく先生の家に行く。

 とは言っても、決してやましい理由からではなく、単純に勉強しに行くのだ。そして、勉強をしていれば、先生の料理も出てくるサービス付きだ。

 まぁ……お世辞でもおいしいと言えるレベルではないのだが……。


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