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先を生きるもの
【悲恋 恋愛小説】

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先を生きるもの-10

「今ならまだ大丈夫です。あなたは変われます」



 やめろ……そんな眼で俺を見るなよ。俺を見透かすような眼で見るんじゃない。



「田原君」



 怖い……このままこいつに癒されるのか。こんなくだらない教師に、俺が今まで築いてきたものを壊されてたまるものか。



「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」



 全ての感情を込めて叫んだ。絶望も羨望も憎悪も哀惜も何もかもを込め、泣きたくなるような、そんな叫び。



「俺は間違っていない。間違えているわけがない。俺が今まで築いてきたものは真理だ。この世界の理だ。あんたなんか一生かかってもたどりつけない真理なんだよ!!」



「いいえ、違います」

「うるさい! うるさいうるさいうるさいうるさいうるさぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」



 否定させるか。否定させるものか!



「それ以上なにか喋ってみろ、殺してやる!」

「田原君。大丈夫です。人間は間違えて生きていくんです。最初から正しいことなんてありません」



 喋るな。これ以上俺に近付くな。俺を否定するんじゃない。やめてくれ、これ以上俺を惑わすな。



「俺は……正しい!」

「いいえ、間違っています」

「どうしてあんたに否定できる! それこそあんたが今言った生徒の個性を殺すと言ったことじゃないのか? そうだよ、あんたは最低な教師だ。オレという個性を殺そうとしているんだ」

「違います。それはあなたの個性ではありません。それはあなた自身を守るための殻のようなものです」



 頭が痛い。耳が痛い。もう殺すしかない。殺すしかない!!

 あいつの首下を力強く握り締める。抵抗する様子も見せないまま、俺の目を見つめた。


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