投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

10年越しの約束の最初へ 10年越しの約束 70 10年越しの約束 72 10年越しの約束の最後へ

10年越しの友情-8

「いや〜ぁ、随分と派手にやられてたなぁ……」
博也と入れ違いくらいに、今度は違う男の声が耳に届いた。
相変わらずの妙な間延びがする声に、一気に緊張を解きほぐされた様な気がする。
「世田…また盗み聞きか?」
俺はガックリとしながら、声がした方へと目をやった。
「人聞き悪いなぁ…偶然聞こえたんだよ、偶然!」
(偶然、ねぇ?)

「まぁ、でも、敢えて言うとすれば、俺は松田に一票かな」
「……なんでだよ?」
「瀬沼ってさぁ、基本、受け身じゃん?」
「は?」
「聖ちゃんが来るのをただ待つ。水沢嬢にあんなに喝入れられても、結局は自分で動かない」
「………」
「そういうのって、松田みたいに一途に想いをぶつけて頑張ってる人間にとっては、かなり腹立つことなんじゃねぇの?聖ちゃんの気持ちがどこに向いてるか分かるからさ、尚更」
世田はいつになく真面目な顔をして、言葉を続ける。一言ずつ、言葉を選ぶ様にゆっくりと……

「好きならさぁ、きっかけなんかは関係無いんじゃねぇの?もちろん、早い遅いも関係ない。形はどうであれ、手に入れたもん勝ちなんだよ」
(手に入れた者勝ち、か……)
「聖ちゃんのことが本当に好きなら、瀬沼もそろそろ動いた方が良いんじゃねぇの?じゃないと、マジで負けるかもよ?」
そう言うと世田は、手をヒラヒラとさせて去っていった。
『まぁ、俺の知ったこっちゃないけど〜!』などと、軽く言葉を付け足しながら……

世田の言葉が、痛いほどに胸に響いた。
受け身でいるつもりは、無かった。
だが確かに、思い返してみるとそうかもしれない。
俺が博也の立場だったら、同じ様に腹を立てていただろう。
聖のことは譲れない。
きっかけは何であれ、聖を好きな気持ちは、博也にだって負けはしない。
だったら……

俺の中で、確実に何かが動いた。


10年越しの約束の最初へ 10年越しの約束 70 10年越しの約束 72 10年越しの約束の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前