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10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

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10年越しの誤算-10

「どこをどうしたらそうなるのよ?瀬沼が誰を想ってるのかなんて、一目瞭然じゃない」
「そうだね。でも、宮木さんは気付いてないよ。二人の仲を誤解しちゃうのも、当然だよね?」
「「………」」
あまりにもその誤解が甚だしく、呆れて物も言えない。
確かに、聖の鈍感さなら十二分に有り得る話だ。だが、まさか本当に信じてしまうなんて……

「念の為に言っとくけど、そもそもの原因を作ったのは光輝自身だよ。俺はほんの少し、背中を押してみただけ」
「なっ…」
「光輝ってさぁ、余裕そうに見えるけど、本当はそんなに余裕でもないんだよね?いつまでもそうやって構えてないで、一度くらいその想いを言葉にしたら?じゃないと……本気で、俺が奪うから」
最後の所だけ声のトーンを落として言った博也の言葉が、何故だかひどく不気味に聞こえた。

余裕なんて、そんなものは最初から無い。そう見えているのなら、それは大きな間違いだ。
会いたくて会いたくて…堪らなかった10年分の想いが、いつだって俺から冷静さを奪っていた。
10年間ずっと、会えるのを待っていたんだ。
1日、また1日と想いを重ねて、やっと会えたというのに…気持ちが抑えられるハズがない。

初めて言葉を交わしたあの日から、聖は俺にとって特別な存在だった。
聖だけが…俺の中では“女の子”だったんだ……


気付いた時には、俺は博也の横を抜けて聖の元へと駆け出していた。
まだ同じ場所に居るとは限らないのに、さっき聖を見た教室へと急いで向かう。

博也に言われたからじゃない。
ただ無性に、この想いを伝えたくなった。
この膨れ上がった想いを、他の誰でもない“聖に”知っていて欲しいと思った。


逸る気持ちをそのままにドアを開けると、まだそこに居た聖は、弾かれた様にこちらを見て表情を凍らせた。
『なんでここにいるのよ?』
その瞳が、そう訴えている。
だが、そんな事で怯んだりしない。
この想いを伝えたくて…もう、限界なんだ。

「聖、俺……聖が好きだよ」


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