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10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

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10年越しの約束-1

「聖〜、まぁたゴメンなさいしちゃったんだってぇ?」
「だってぇ…」
「はいはい、解ってますって!例の初恋の人が忘れられないんでしょ?ホント聖って、一途だよねぇ…」
「初恋って…そんなんじゃないよっ!」
「でも忘れられないんでしょ?」
「それは…そうだけど……」


突然だけど、皆にも忘れられない人って居るかなぁ?
私・宮木 聖(ミヤギ ヒジリ)には、どうしても忘れられない人が一人だけ居るの。
いつも考えてちゃうのは、『彼に会いたい』という事…これがどういった類の感情なのかは解らない。好きと言えばそうかも知れないし、ただの懐かしさと言えばそうかも知れない。
でも、どうしても会いたいの。
今の私には、この感情の理由がどうしても解らない。
誰か教えてくれると良いんだけどなぁ…


彼と出会ったのは、約10年前…あの頃の私は喘息持ちで、よく入院を繰り返してた。
病院はいつも薬品の匂いが立ち込めていて、幼い私にはあまり良い印象が無かった。ハッキリ言って、入院するのが大嫌いだった。
彼・コウキ君と出会ったのはそんな時だったの。

コウキ君は私の隣のベッドに入院していて、冷めた目をしていつも一人で本を読んでいた。
私は彼の事が恐くて、話すことは愚か、目も合わせられない状態だったの。
今考えると、物凄く失礼な話なんだけどね…


そんな彼と初めて話したのは、雪の降る寒い夜…私が怖い夢を見て泣いている時だった。


「うわぁん…恐いよぉ…ママぁ……」
「うるさいんだけど…」
枕に顔を埋めて泣いていると、突然暗闇に声が響いた。
「だ、だぁれ?」
それはあまりに突然で、私の涙は一瞬にして止まる。
「隣だよ、隣っ!」
「へ?」
私が驚いていると、シャッという音と共にカーテンが開けられ、上半身を起こした男の子が顔を覗かせた。
「お前、名前は?」
「へ?」
「名前だよ、名前っ!」
「ひ、ひじり…」
「ふぅん…ガキ!」
「え?」
「母親が恋しいだなんて、お前、まだまだガキだなっ!」
(はぁ?なんでこの子にそんな事言われなきゃなんないのよっ!)
「そういう自分だってガキじゃないっ!」
その子は、見た感じ私と同い年くらい。妙に大人びた感じはしてても、所詮はただの子供だった。
「俺はそんなにわんわん泣かねぇもんっ!犬みてぇ!」
(むっかぁ…)
「犬じゃないもんっ!」
「ポチ、お手!」
そう言ってその子は、私に向かって手を差し出した。
(な、なんなのよコイツ!)
「ちっがぁぁう!!!」
私はその手をバチンと叩きながら、つい大声を出してしまった。
「ははっ、そんな赤い顔しちゃってさぁ…ホント、ガキ!」
その子は顔をクシャクシャとさせて、楽しそうに笑っている。そんな顔をされちゃうと、どうも怒る気になれない。
いつの間にか私も、その子と一緒に笑い出してしまった。


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