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10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

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10年越しの友情-7

「松田のこと、なんとかしてよね。全部、瀬沼のせいなんだからっ!」
水沢は帰る直前、聖の手を取りながら、俺にこっそりとそう耳打ちした。
(なんでそうなるんだよ?)
自分だけのせいだとはどうしても思えないが、聖と博也の手前、反論する訳にもいかず…半ば強引に聖を連れて帰る水沢の背中を、俺は無言のまま見送る。

水沢に言われるまでもなく、俺だって、博也のことはなんとかしたい。
博也の存在は面白くないし、出来ることなら、聖から遠ざけてしまいたい。
だが、だからといって、なんとか出来る相手だとも思えない。


考えを巡らせながら近くの机に腰掛けると、作り笑いすら浮かべずに俺を見据える博也と目があった。
その瞳は、聖がここに居ないせいか、いつも以上に殺気立っている様な気がする。

「博也…聖はお前の気持ち、これっぽっちも気付いてねぇよ?」
俺は、博也を見据えて言ってやった。
博也はピクッと眉を動かし、不快そうに腕を組む。
こんな言葉で博也が退くとも思えないが、まずは先手必勝といった感じだろうか。

「その言葉…そっくりそのまま光輝に返すよ」
「俺は良いんだよ。俺はお前みたいに、今、焦る必要は無いからな!」
焦る必要は無い…と、思う。
聖の心はきっと、俺の方へ向いている。
博也とは違う。
「随分と余裕だね、光輝。10年の絆が有るから、宮木さんはそう簡単に自分から離れない…そう思ってんの?甘いんじゃない?」
「どうして…それを……」
(なんで博也が知ってるんだよ?)
「知らないとでも思ってたの?二人がお互いの存在に気付く前から、俺は二人の約束を知っていたってのに……」
(そ、んな…ありえない)
「な、んで…聖に聞いたのか?」
「さぁね。自分で考えれば?」
博也は冷たく言い放つ。
いくら昔は親友と呼べる存在だったといえど、博也にだって、聖とのことを話した覚えはない。
だから、俺達の約束を知っているだなんて、考えたことすら無かった。

「光輝さぁ、少し前までの自分が宮木さんに対して何て言ってたのか、覚えてる?」
博也はショックを隠せないでいる俺を見据えて、更に言葉を続けた。
「いつも『興味無い』って言ってたよね?それも決まって、不機嫌そうに」
「え…」
「それが、宮木さんが約束の相手だって分かった途端、手のひらを返した様に……ちょっと、調子良すぎるんじゃない?」
「それは…」
「宮木さんが約束の相手だって、知らなかったから?だから興味が無かった?だったら、宮木さんがその相手じゃなかったらどうだった?」
「………」
「まだ今でも、『興味無い』って言い続けてたんじゃないの?」
反論は、出来ない。
博也は俺のことを、よく知っている。
だてに何年も、親友を続けていた訳ではない。

「反論、出来ないよね?図星だもんねぇ?そんなヤツに、宮木さんは渡せない。光輝が目を背けている間も、俺は宮木さんだけを見てたんだ」
「………」
「光輝には負けない。光輝にだけは、絶対に負けたくない」
博也は、ひときわ口調を強めて言った。
俺だって負けたくないと、喉元まで出かけた言葉が声にならない。
俺は博也みたいに、負けないと言い切ることが出来るのだろうか?
言い切る資格が、あるのだろうか?

ただただ沈黙を続けるだけの俺を見て、博也は“相手にならない”とでも言いたげな表情を浮かべて教室を出て行った。


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