愛を囁くよりも先に…加藤美緒の秘め事…-3
「おっはよー!!」
ノックもせずにドアを開けて登場したのは――加藤美緒(かとうみお)。
社長の仲の良い友人だ。
俺は社長の体から離れて、社長も服を整える。
「あれ…?」
状況を判断した加藤さんは恥ずかしそうに顔を真っ赤にしていた。
いくらそういうことに慣れているとしても、やはり人のそういう現場に出くわせば恥ずかしくもなるものなのだろう。
「美緒…ノックくらいしなさいよねっ!!」
・・・・・・・・・・・・
「いやー…本当勘弁して下さいよ」
「ごめん、ごめん」
ここは会社の近くのバーのカウンター席だ。
社長に「今夜アキ君とお酒飲みたいから貸してー!」なんて言って、俺は借りられた(?)わけである。
「まさか朝からHしようとしてるなんて思わないでしょ?」
加藤さんはそう言い終えると、グラスに入ったピンク色の液体を口に少し流し込む。
「まあ…でもちょっとかっこわるいとこ見ちゃったからアキ君におごろうって思ったのよ」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて…」
「何でそんなに他人行儀かなー。あたしのこと、信用してないんだ?」
突然、俺の左手に触れる。
触れられたことにびっくりして、俺は加藤さんの方を振り向いた。
「こーんなこと、されるって思ってるの?」
「冗談、やめて下さいよ」
俺は内心ドキドキしていたが、冷静を装ってそう答える。
「バカ。あたしがこんなことアキ君にするなら純が貸してくれるはずないでしょー。あたしは純一筋だからね」
「そうなんですか?」
加藤さんが俺の左手から右手を離して、代わりにグラスを持つ。
グラスから、ぽたりと滴が落ちた。
その滴を見て、加藤さんが口を開く。
「純は、ね。泣くときはいつもこうなの」
「え?」
いきなり何の話だろう、と思って俺は気の抜けた返事をした。