愛を囁くよりも先に…加藤美緒の秘め事…-2
「んっ…」
唇が離れたときには、先ほどの心臓のうるささは消えていた。
妙に落ち着いているのは、俺本人にもわかる。
『一方的に抱いた』というのは単なる思いこみだったと、俺がこのキスによって認識したからだと思う。
「もう、やっとまともに見てくれた。いらない手間とらせないでよね?」
「す、すみません…」
社長がクスッと笑って俺の頬に手を添える。
「じゃあ…何でそんなに落ち着きがなかったのか教えて?」
また、何だか心臓がうるさくなってくる。
――面倒くさい男だな、俺は!
頭の中の俺は自分の頬を両手でパチパチと叩いている。
「いや…社長のこと好きだって言う前にあんなことをしてしまったので…
でも今はそんなことないです。さっき、キスされて妙に落ち着いちゃいました」
…って何言ってんだ、俺はー!!
めちゃくちゃかっこ悪い。
正直に言うことの、このかっこ悪さ。
いや、俺は悪くない!
社長が言葉を考える時間くれなかったから…ってそんなこと社長のせいにすべきじゃない!
「嬉しい…」
嬉しいですか?
そうですか、俺も社長とそうなれて嬉しい…
って、え…?!
「今嬉しいって言いました?!」
「言ったわよ」
そう言ってニコッと笑う社長は、すごく可愛い。
「もう…ほんと、さっきのいらない手間。
三沢が全然仕事以外の話をしないから、あたしのあんな姿を見て…嫌いになったのかと思ったじゃない」
「…そんなわけないじゃないですか!」
俺は思わず社長を抱き寄せる。
「好きなんですよ、社長が…」
何か、すごくかっこ悪いな…俺。
だけど…社長ならこんな俺を見せても、いいんじゃないかって思ってしまう。
「三沢…ちゃんと、嬉しいって思ってるから…」
そう社長が言った後、自然とお互いの唇が重なり合った。
「三沢…」
俺が社長の体をデスクに押し倒そうとした、そのとき。