愛を囁くよりも先に…加藤美緒の秘め事…-1
抱いてしまった。
社長として尊敬し、姉貴のような存在で慕っている社長を。
そんなことを思いながら三沢秋(みさわあき)は社長室で、社長である金澤純(かなざわじゅん)を目の前にしていた。
この場で三沢が金澤を抱いてから何週間か経っているのに、後悔の気持ちが拭えない。
――何で『好きだ』って言う前に抱いてしまったんだろう。
そう三沢が強く思っているからだった。
27年間生きてきて、女性と遊びで関係を結ばなかったことがないわけではないが、大事にしたいと思っているならなおさら…「もう守れない」という自分の欲求だけをぶつけるのは許せない。
そんな思いが三沢の頭の中を巡っていた――
愛を囁くよりも先に
…加藤美緒の秘め事…
「――本日の予定は以上です。何か質問はございますか?」
俺は手帳を閉じて、そう言った。
顔を上げて、しっかりと社長を見ることができない。
「ひとつ、質問」
「――はい。何でしょう?」
質問をされると思わなくて、俺の声が震える。
「ここ最近、あたしと目を合わせようとしないのは何で?」
「――え?」
俺は目を見開いた。
急に心臓が爆発しそうになる。
「…そんなことないですよ?」
思わず下を向く。
目など、合わせられるはずがない。
あんな勝手な気持ちで抱いてしまったことが、あんなにも心に引っかかるから。
「下向かれても、全っ然説得力ないんだけど?」
社長席から立ち上がり、こちらに歩み寄ってくる。
俺との距離は――
0センチ。