Unknown Sick-81
十一 再誕
そして……彼は逝ってしまった。私だけを残して。余命なんてどうにかなると思ってた。気の持ちようだけで何とかなると思ってた。けど、現実はそうはいかなかった。
彼の葬式はひっそりと行われました。私とお姉さんと雅也さん、そして数少ない親戚で。彼の顔は、ひどく痩せていました。白くて、唇には色がほとんどない。もう私の唇と重なることなどなくて、二度と抱きしめてもらえない。
頬に手を当ててみると、怖いほどに冷たくて……彼が死んだと実感させられた。
「ひどいだろう? こんなに痩せて」それに私は何も応えられなかった。それを察しても、お姉さんは話を続ける。
「あそこまで生きられただけでも、医者は奇跡だと言っていたがな」
「奇跡なんかじゃ……ありません」
そう、奇跡なんかじゃない。彼は死んでしまったから。そんなの、奇跡なんかじゃない。
「そうかもな。でも、正和は幸せだった。藤堂に愛されてたのだからな」
「私なんかで良かったんでしょうか?」
「お前だから良かったんだよ。正和ならそう言うだろうぜ」
雅也さん……。
「その通りだな。だから最後にお前に言ったんだ。喋れるような状態じゃなかったのに」
「忘れないで」「忘れないで」「忘れないで」
三人同時に言う。
「でも、その後まーちゃんは言ったんです」
「なんてだい?」
「聞こえなかったんです。ううん、聞こえていたのかもしれません」
「そうか……。でも大丈夫、お前なら思い出せる」
そう言って、お姉さんと雅也さんは私と彼の側から離れていきました。彼は明日には焼かれてしまう。もう彼を見ることができなくなる。それが信じられなくて、もう一度彼に触れてみる。
「まーちゃん……」
どうしてこんなことになってしまったの? 何がいけなかったの? 彼が何をしたんですか? 教えてよ……誰でもいいから!
「教えて……よぉ」
まーちゃん……どうして逝ってしまったの? 私を置いていかないでよ。もう、生きていけないよ。私、あなたがいないと生きていけないよぉ……。