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Unknown Sick
【悲恋 恋愛小説】

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Unknown Sick-1

一 宣告





「残酷なことを言うようですが、余命一年。いえ、半年もないでしょう」

 医者は深刻そうに、俺の目を見ないで言った。眼鏡越しで見える瞳は、ひどく同情しているように見える。

 気紛れで受けた健康診断でこんなことを言われるとは想定外だ。いや、それ以前に何でだ。体調には何も問題なんてないぞ。体に悪いことをしているといえば、煙草を吸っていることくらいだ。他に何もしていない。

 全ての内蔵機能が異常に低下している。これだけでも一般生活どころか生きているだけでも不思議だという。しかも、その原因となるものが一切存在しない。調べられることは調べたらしいが、何一つ異常は見つからなかったらしい。

「入院したほうがいいでしょう」

 冗談だろう。俺は入院なんてしない。今だって二本の足でしっかりと立てる。それどころか、今から百メートル走ったっていい。俺は健康だ、大丈夫だ、生きている、死ぬなんてことありえない。

「二階堂《にかいどう》さん」

「入院は、しない」

「しかし」

「しない」

 俺は自由に生きる、そう決めた。こんなくだらない場所で束縛なんてされるものか。

「わかりました……では一応薬を出しておきます」

 大きなため息をついて医者は顔をひきつりながらだが同意し、「何かあったらすぐに来てください」医者はついでのように言う。

「はい」

 それに対し、俺は表情を変えずに言葉を返した。





 その後、薬局で薬をもらった。考えていたよりも量は多かった。たくさんの薬の詳細を見てみると、精神安定剤という文字が目に入った。

 なるほど、余命が宣告された後狂わないようにということだろう。

 病院を出たとき、眩しいくらいの日差しに目眩がした。その目眩を堪えながら、地下駐車場に停めてあるバイクの元へと向かった。姉が免許取得記念に買ってくれた黒いバイク。それに跨りエンジンをかける。バイクは耳障りなほどに大きな音を立て、地下駐車場を後にした。



 俺が住んでいる場所は八階建てマンションの八〇三号室。景色はいい。夏祭りの時期には花火がはっきりと見える。そこで姉と友人と供に酒を飲むのが、俺の楽しみの一つだ。その時期はもう過ぎて、今は秋に入ろうとしている。

 ドアノブに鍵を開け、ドアノブを握ったとき、隣のドアが開く。


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