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Unknown Sick
【悲恋 恋愛小説】

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Unknown Sick-77

「じゃあ、発作が起こるとき、何か前兆みたいなものはあるかい?」

「前に話したとおりだ」

「心拍数が……いや、心臓が強く鼓動するのかい?」

 こくん、とうなずく。

「それはどのような時に起きるんだい?」

「それも、前に話したとおりだ」

 何か、予想外の出来事が起きたら、なるんだ。

「……そうか」

「何か、わかりましたか?」

「えぇ、これだというわけではありませんが……」

「話してくれませんか?」

「わかりました」

 医者は、手に持っている資料を見ながら話し出す。

「正直、この病気の原因はわかりません。新種のウィルスでも、何かの染色体が不足しているわけでもない。ただ、内蔵機能のみが異常に低下しています。その辺りは前も説明したので省略させてもらいますが……しかし、その中で少々気になる箇所がありました。脳です」

 頭がおかしくなっていると。笑えないな。

「脳だけは正常に機能していました。脳波も何も異常なし。ここだけが他の内臓と違うところです。そこで私たちは、脳に何かあると考え検査を続けさせてもらいました」

 脳は正常……か。

「しかし、やはり何もありませんでした」

「それでは今までと何も変わりません!」

 まったくもってその通りだ。

「落ち着いてください。そこで私たちは、ある仮説を考えました。いいですか、あくまでも仮説です。恐らく、人間の行動全てを司る脳だけは正常であるが故に、体内の異常に気付いていないんです。だから、普段通りに脳は内臓を機能させます。そのせいで、正和君は病気に気付かず、普段通りに生活できたんです」

 医者は一呼吸置く。姉もそれに合わせるかのように、細く息を吐いた。

「予想外の事態。例えばこの病気に気付いたときのような一時的に心拍数が増加するような事態に遭遇したとします。すると脳は異常だという信号を体へと発します。しかし既に体は異常です。そこで、脳は初めて体が異常だと気付き、発作を体に?引き起こさせます? 吐血や嘔吐、目眩、間接痛、不規則な心拍、呼吸困難など、正和君が今までなったことのある症状を全て。ですが、ある程度落ち着くと、脳は?今起きた異常こそが異常であった?とまた勘違いし、前のような異常という名の正常の生態活動を続けさせるわけです。

 正直、これだけの症状でも軽いほうです。脳が正常であると勘違いしているために、異常であろうとも、普段はこれらの症状が滅多に現れないのです」

 おかしいぞ。それには穴がある。

「しかし、それではおかしいでしょう。脳が正常なら、体の異常に気付いているはずです」

 そう、その通りだ。

 脳は体を司る器官だ。体の異常に気付かないわけがない。何かしら異常を知らせるはずだ。俺はそんなもの知らない。


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