Unknown Sick-76
「何だ、話というのは」
「くだらないことを考えていたんだ」
先程考えていた未来像を姉に話した。恥ずかしがることもなく、はっきりと。
「そうか……」
「どう思う? 愚かな奴だと笑ってくれるかい?」
「まさか」
姉は肩をすくめ、細くため息をつく。
「すまなかったと思っている。今それを聞いてそう思った」
姉はベッドに座り、俺の手を強く握り締める。
「力のない私を許してくれ。お前の夢を奪った私を許してくれ」
「あなたは何も悪くないよ」
そうさ。あなたは何も悪くない。悪いのは俺のほうだ。何も理解しようとしなかった。何も見ようとは思わなかった。現実から目を逸らし、誰かの責任にしてきた俺のほうさ。
「だが……」
「俺はもうあなたを恨んでいない。あなたを傷つけない。だからそんなことは言わないでくれ」
もういいんだよ。俺は何もかもがわかったから。あなたの優しさも、世界の美しさも。
「正和……」
「俺は幸せさ。例え死のうともね」
◆
入院してからたった数日で、俺はベッドで寝たきりのような状態になっている。誰かが来ても、起き上がることさえも難しい。
「正和君、お姉さんが来たよ」
医者の言葉が聞こえ、そちらへと視線を移す。
「先に聞きたいことがあるんだけど、いいかい?」
「問題、ない」
何でも聞いてくれ。この病気を治す糸口を見つけられるのなら、何でも話してやる。
「何か……そう、この病気の原因となるようなことをやったつもりはないかい?」
「ない」
普通に生活していただけだ。バイトして、帰ったら煙草を吸って、時々酒を飲んで、寝るだけの生活だ。