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Unknown Sick
【悲恋 恋愛小説】

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Unknown Sick-75







 前の病室とは違って、密閉感はなかった。大きな窓があって、そこからはこの街の景色が一望できる。姉さんの配慮かな。少しでも良いところで療養してほしいという考えだろう。その気遣いはとても嬉しかった。姉は姉なりに、努力をしている。医者は海外からわざわざ呼び出し、最高峰の医療。物凄く高いであろう医療機器。まぁ、せっかく広い部屋なのに、この医療機器のせいで狭く感じるのだが。

 天気のいい日が続いている。外は青空が広がっていて、とても気分がいい。ベッドの上から見ていても、心が安らぐ。

 吐血も、呼吸困難も何もない。本当に病気なのか、疑問に思えてくる。無駄に時間を過ごしているような気もする。でも……この調子なら治りそうだ。藤堂と一緒になれる。そう思うと口元が緩んでしまう。

治ったら何をしようか。まずは藤堂と同棲するために、新しい家を借りないとな。そして、藤堂好みに部屋にしてやろう。それが終わったら、姉さんの会社で働かせてくれるように頼まなくては。本当は嫌だけど、男が家計を支えなくてはならない。子どもができたら、なるべく一緒にいてやらないと。俺みたいな大人にならないために、愛情を注いで……藤堂みたく真っ直ぐに育つように……。

 はは、妄想に浸るなんてらしくないな。でも……この病気が治ったら……。

 ドアが控えめに鳴った。

「入るよ」

「あぁ」

藤堂か。嬉しいな。また見舞いに来てくれたのか。

「元気ですか?」

「見ての通りだ。何も問題ない」

「そっか……」藤堂の表情が浮かない。

「どうしたんだ?」

お前のそんな顔は見たくない。いつも通り、能天気に笑っていてくれ。

「お前のことで……話がある」

ノックもせずに姉が入ってくる。その表情は藤堂と同じく、浮いていない。

「なにさ」

「正和……気をしっかりと持って聞けよ」

なんとなくわかるよ。

「お前は今月、もしくは来月までの命らしい」

……くだらない妄想をした罰か。そうだよな。小説や漫画みたいな話なんてないよな。

「そう……」

胸が痛い。涙がこみ上げてきそうだ。

「まーちゃん……」

「藤堂、悪いが今日はもう帰ってくれないか? 姉さんと話がしたい」

「わかった……」



 藤堂がいなくなり、部屋は広くなった気がする。姉さんがいても、だ。外へと視線を向けた。太陽はまだ高い。


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