Unknown Sick-68
「なんだよ」
「別に」
「くだらない」
またキスをして、俺は瞼を閉じた。
心は穏やかだ。自分が未知の病にかかっているとは思えないほどだ。この夢のような日々が、ずっと続けばいい。
目が覚める。枕もとの時計に目を移すと、もう午前の十時を回っている。隣では藤堂がすうすうと可愛らしい寝息を立てている。ゆっくりと頭を撫でた。
すると藤堂はオレとは反対の方向へと寝返りをうった。
「薄情な奴め」
藤堂の頬にキスをして、俺は部屋を出た。
キッチンに立ち、オレは昼食の準備をする。サンドイッチという簡単なものだが、藤堂よりは美味く作るさ。それに起きたばかりならこれくらいの方が胃も驚かないだろう。そうこうしている内に藤堂は起きてきた。
「おはよう……」
藤堂の服装はだらしないものだ。寝巻きはサイズが合っていないのでダボダボで、髪は少し跳ねていた.
「だらしない格好だな」
「まーちゃんがこうしたんでしょ?」
「うるさい……」
昨日のことが脳裏をよぎる。すると急に恥ずかしくなって、なんだか顔が熱くなる。
最後の一つに具を詰めて、テーブルに置く。そして冷蔵庫からジュースを取り出し、コップに注ぐ。
「おいしそう」
「そりゃ……」
「私のよりは美味しいって言うんでしょ? わかってるもん」
「……さっさと食べるぞ」
不貞腐れた態度をとって、オレは椅子に座る。だが藤堂は椅子に座らずに、俺の方へと寄ってくる。
「どうした?」
藤堂は答えずに、黙ってオレの右頬にキスをする。
「さっきのお返し」
「起きてたのか」
にっこりと笑って、オレの向かいの椅子に座る。
食事をしている最中は、オレの夢について語った……いや、語らされた。
「まーちゃんはお医者さんになりたかったの?」
「まぁな」
「なんで?」
「……確か」
姉の一言だった。