Unknown Sick-67
「んで、どうだ正和?」
「ん?」
雅也の顔を見ないで返事する。
「世界は汚れているのかよ?」
唐突な問いかけ。でも答えは出ている。
「汚れてないよ、世界も、俺も。いつも、綺麗なままだ」
時々嫌になるかもしれない。時々汚れていると感じるかも知れない。
それでも、この世界は美しい。
今の俺は、自信を持ってそう言える。
「そうかい」
からからと音を立て、戸が開く。
「雅也、帰るぞ」姉が雅也に対して言う。
「あいよ、まー姉」
「なんだ、帰るのか?」
「俺たちは忙しいんだよ」
「そうか……」
「あぁ、君たちはゆっくりとしたまえ。なんと言ったって、恋人同士なのだから」
「雅也!」「雅也さん!」心ならず藤堂と声が揃う。
「おぉ、怖い」
にっかりと笑うと、そそくさと身支度をして出て行った。
「何だ、一体」
「お二人なりの気遣いじゃない?」
「やれやれだ」
夕陽はもう大半を地上に飲み込まれている。
「ねぇ、キスして」
「……」
煙草を灰皿に押し当てる。
そして、藤堂を抱き寄せ、優しくキスをする。それは一瞬で、永遠のような時間。甘くて、切なくて、どこか恥ずかしい。
「大好きだよ、まーちゃん」
「……ありがとう」
抱き合いながら、俺たち二人は夕陽が沈むのを待った。
この夜、俺と藤堂は共に寝た。前のように一方的ではなく、深く愛を確かめた。
汗ばむ体、幾度と繰り返される濃密な口づけ、重なる吐息。二人が一つになる。永遠に変わらない愛の誓い。全てを受け入れてくれたようで、本当に嬉しかった。
やがて、それが終わったときに、藤堂は隣で優しく微笑む。