Unknown Sick-63
「付き合うことになるんだから、デートでもしようよ」
がりがり。
「あぁ、そうだな」
「どこに行く?」
「海にでも行くか」
「寒くない?」
「いや、大丈夫だ。きっと騒がしくなる」
だって、騒がしい人たちを呼ぶのだから。
バイクを走らせ、近くの海へと着いた。砂浜はさらさらとしていたが、靴の中に入りそうで、少し嫌だった。
藤堂は周りをきょろきょろと見回している。
「誰もいないね」
「そのほうが好都合だ」
太陽は高い位置で、燦々と輝いている。じっとしていても、じんわりと汗が滲んでくる。
大きくあくびをして、バイクの鞄に入れておいたブルーシートを広げる。適当な石を四隅に置き、俺はシートの上に寝転がった。また大きなあくびがでた。
いい感じだ。ぽかぽかと体が温まる。
「彼女を置いて昼寝ですか」
「まぁな。お前もどうだ」
「じゃあご一緒します」
藤堂は俺の隣に横になった。お互い何も話さずに、ただ、秋という季節に身を任せた。
波の音はクラシックのようにささやかだ。ゆっくりと、引いては寄って、去っていく。それ以外に音はない。そっと、藤堂の右手を握る。だが、その時間は長くなかった。
車の近づく音がした。瞼を上げて、その車を見る。赤い高そうな車だった。その車から降りてきたのは、姉と雅也だった。
「来たようだな」
「どうして……?」
二人は車から俺が頼んでおいたものを取り出して、こちらに来た。
「まったく、急すぎる」
「本当にな」
「バーベキューセット?」
「あぁ。肉が食いたくてな」
雅也からそれを受け取り、数分で組み立てた。炭や、その他の必要なものも、何も言わずに黙々と用意した。
ちなみにバーベキューセットを使いはするが、やるのはバーベキューではなく焼肉だ。
「こんなものか」
「あぁ。じゃあ火を点けるぞ」雅也が火を点ける。
既にテーブルなども組み立てられている。うむ、完璧だ。