Unknown Sick-61
その言葉を聞きたかったのかもしれない。優しくしてほしかったわけでは、決してない。病気だから、という理由で、自分を守って欲しくなかった。
ただ、一緒に生きてほしかった。お互いを尊重し、共に歩んで欲しかった。
「まーちゃん……」
「ただ、一緒に居てほしかった。寄り添ってほしかったんだ。理解なんてしてもらわなくても、よかった……」
俺の傍に、そっと居てほしかった。何も言わないで、言葉なんかで誤魔化そうとしないで、今みたく優しく抱いて欲しかった。
でも、それを誰もわかってくれなかった。みんな、俺を誤魔化そうとしていた。心地よい言葉を発して、俺を無理やりに安心させようとしていた。
だから、拒絶するしかなかった。本当に好いてくれる人を、愛してくれる人を求め続けた。だからこそ、理解してくれる人を、求めただけだったんだ。
「私が、一緒にいるから」
「あぁ……お前がいてくれる」
どんなときでも、一緒にいてくれた。
俺が、壊れかけたときでも、狂いかけたときでも、いつも傍にいてくれた。全部知っているのに、ずっと待っていてくれた。俺が、話すのを。俺が、心を打ち明けるのを。
そっと、藤堂から体を離す。
「お前が、居てくれる」
「あなたが、居てくれる」
目は赤くて、涙の跡がしっかりと見える。その跡をなぞるかのように、未だ涙は流れる。
彼女を、幾度傷つけただろうか。俺を、理解してくれた彼女を。何故、俺は理解しようとしなかったのだろう……。
「何もわかっていなかったのは、俺だった」
「でも、もう大丈夫」
「あぁ、もう大丈夫だ」
俺は生きていける。自分をもう一度作り直せばいい。矛盾だらけで、あまりにも脆かったけど、今度は大丈夫だ。俺一人じゃない。そっと傍に寄り添ってくれる人がいる。俺が、愛することができる人がここにいる。
「ありがとう……」
少しだけ、照れくさい。でも伝えたかった。
「どういたしまして」
くしゃくしゃな笑顔で、彼女は笑い返してくれた。
その笑顔が、今はとても愛しい。