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Unknown Sick
【悲恋 恋愛小説】

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Unknown Sick-60

「本当に、そうなの?」

「黙れ……」

 どうしてだ、どうしてお前は俺の心を知っている。

「だったら、病院に行こう? みんなで、治そう?」

「黙れよ……俺は死ぬんだ、死ぬしかないんだ」

「矛盾してるよ、まーちゃん。救われる道が見えているんなら、頑張ろう?」

 心臓が煩い。呼吸が邪魔だ。俺の思考を止めるな。考えろ。考えるな。生きたい。死にたい。綺麗だ。汚い。俺は矛盾していない。矛盾している。俺はどこだ。俺は居ない。俺を証明できない。答えがない。答えはきっとある。探すな。探さないと見つからない。考えるな。

「救われたい、って思うのは誰でも思うことだから」

「煩い、煩い、煩い!」

 喉が焼ける。何かが逆流してくる……血に違いない。嫌だ、またこいつの前で……。

「まーちゃん、大丈夫だよ」

 そっと、俺を抱く。

「あ……」

 あいつの鼓動が聞こえる。とても穏やかで、とても切ない。とくん、と小さくだがしっかりと、聞こえる。

「大丈夫」

「大丈夫なものか……俺は死ぬんだ、死ぬしか道はない」

「きっと大丈夫」

「そんな不確かな言葉、信じられるものか」

 とくん……穏やかな鳴動。

「みんな、まーちゃんを愛してる」

「信じられか。そんな言葉」

「……」

 とくん、とくん、とくん……。それに共鳴するかのように、自分の鼓動が穏やかになっていく。

 やがて鼓動は重なり、吐血の感覚も失せる。涙腺が熱い。

「あ……」

 自分の意思に反して、涙が流れる。嗚咽が漏れる。

「あぁぁぁああぁぁぁぁあぁぁっ!」

 幼い子どものように、すがって涙を流した。今までの苦しみを全て流し去ろうとでもしているかのように。

「怖い、怖いんだ……死ぬのが、生きてこの病気と闘うことが。この先に絶望しか残らない気がして、治らない気がして……」

「うん……」

「俺が見つからないんだ……。考えれば、考えるほど、矛盾しか見つからなくて、自分が証明できなくて……」

「うん……」

「この病気のせいで、今まで手に入れていたものが壊れてしまって……」

「大丈夫だよ。私がまーちゃんを証明してあげる。一緒に闘ってあげる。絶望なんて、残さないように。希望だけを残せるように、一緒にいるから」

「信じられるか……」

「私は、まーちゃんと一緒に、生きてみせる」

 心が穏やかになっていく。静かに、ゆっくりと。


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