投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

Unknown Sick
【悲恋 恋愛小説】

Unknown Sickの最初へ Unknown Sick 56 Unknown Sick 58 Unknown Sickの最後へ

Unknown Sick-57

「食べないの?」

「あぁ。食欲がないんだ」

 目の前で、おいしそうにピザを食べている藤堂を眺めながら煙草を吸う。何故、こいつはまだ俺の近くにいようとするのか。偽善かもしれない。哀れみかもしれない。

 駄目だ。考えるのは止めるんだ。また、自分を保てなくなる。

「新しい小説買ったんだね」

「まぁな」

「この小説は私も買ったよ」

「そうか」

「神様と子供の話、読んだ?」

「あぁ」

「どうだった?」

「理不尽な話だと思う」

 藤堂は珍しく深くため息をついた。



 藤堂に急かされ、俺は『理不尽な話』の続きを読むことになった。

 理不尽な話、か。確かにその通りだな。やれやれと思いながら、本を閉じる。

「すごい悲しいよね……」

 藤堂は思い出してか、目が潤んでいる。

「くだらないな」そんな藤堂を横目に煙草を灰皿に押し付ける。

「なにがさ」少々怒っているようだ。

「それは理不尽な話だ。悲しいと思うのはどうかしている」

「理不尽な話だから、悲しいんじゃない?」

 そもそも、この話は理不尽な者たちの話だ。正しいことをした者のことを認めず、それを蔑む。それをどう思うかを問う、そのような話。

「なに考えてるの?」

 いけないな。考えるのはやめよう。

「なんでもない」

「そっか……」

 藤堂は最後の一切れを食べると、ジュースを一気に飲み干した。

 俺は新しい煙草に火を点ける。

「おい」

「なに?」

 食事の終わった藤堂は、片付けるわけでもなくソファーで寝そべって先程の小説を読んでいる。

「お前はなんでここに来た?」先程から疑問に思っていることを聞く。


Unknown Sickの最初へ Unknown Sick 56 Unknown Sick 58 Unknown Sickの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前