Unknown Sick-57
「食べないの?」
「あぁ。食欲がないんだ」
目の前で、おいしそうにピザを食べている藤堂を眺めながら煙草を吸う。何故、こいつはまだ俺の近くにいようとするのか。偽善かもしれない。哀れみかもしれない。
駄目だ。考えるのは止めるんだ。また、自分を保てなくなる。
「新しい小説買ったんだね」
「まぁな」
「この小説は私も買ったよ」
「そうか」
「神様と子供の話、読んだ?」
「あぁ」
「どうだった?」
「理不尽な話だと思う」
藤堂は珍しく深くため息をついた。
藤堂に急かされ、俺は『理不尽な話』の続きを読むことになった。
理不尽な話、か。確かにその通りだな。やれやれと思いながら、本を閉じる。
「すごい悲しいよね……」
藤堂は思い出してか、目が潤んでいる。
「くだらないな」そんな藤堂を横目に煙草を灰皿に押し付ける。
「なにがさ」少々怒っているようだ。
「それは理不尽な話だ。悲しいと思うのはどうかしている」
「理不尽な話だから、悲しいんじゃない?」
そもそも、この話は理不尽な者たちの話だ。正しいことをした者のことを認めず、それを蔑む。それをどう思うかを問う、そのような話。
「なに考えてるの?」
いけないな。考えるのはやめよう。
「なんでもない」
「そっか……」
藤堂は最後の一切れを食べると、ジュースを一気に飲み干した。
俺は新しい煙草に火を点ける。
「おい」
「なに?」
食事の終わった藤堂は、片付けるわけでもなくソファーで寝そべって先程の小説を読んでいる。
「お前はなんでここに来た?」先程から疑問に思っていることを聞く。