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Unknown Sick
【悲恋 恋愛小説】

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Unknown Sick-53

「くだら……ない」

 鏡から目を背け、俺は泣いた。ただ、無様に。

 俺が何をしたって言うんだ。ただ生きていただけじゃないか。なんでこんな病気にならないといけないんだ。なんで……こんな病気に俺の人生を狂わせられなければならないんだ。

「なんだよ、何でだよ!」

 何者でもないものに問う。答えは当然返ってこない。そんなことちゃんと理解していた。それでも、問わざるを得ないほどの絶望感。

 これを誰が理解できるものか。誰が癒せるものか。だから、人間なんて嫌いなんだ。言葉で誤魔化して、こちらの本心を知ろうとする。こちらが話してみれば、ただ同情して、優越感に浸る。だからどうした、とでも言うように。

「ちくしょう……」

 どうしたっていうんだ……病気に八つ当たりするなんて、俺らしくない。

 俺らしくない?

 何を言っているんだ。これが俺なんだ。俺が俺として存在している以上、自分でしか自分を肯定できないのに。なんで俺が自分自身を否定しないといけないんだ。

「わからない、わからない……」

 病への憤りは、いつの間にか失せて、自分で自分を否定したことにひどく衝撃を受けた。

「だって、俺は自分で言ったじゃないか。俺を決めるのは俺自身だって。それ以外、俺は存在しないんだ。なのになんで俺を否定する。俺は、俺で……だれもおれをひていできなくてそれでもじぶんをこうていしたいのになにごともじしんできめなければならないのに……」

 くだらないことだと考え、それでも考えないと自分が壊れてしまいそうだから……必死に自分を作る。

俺が存在している以上は誰も否定できないはずなのに、俺が俺を否定する。

堂々巡りのような考えが、いつまでも螺旋階段のようにぐるぐると回る。

 きりきりと心臓が締まるような音がする。それなのに鼓動は早く、強かった。やがていつもの発作のようなものが現れる。

「は……」

 呼吸が苦しくなる。嫌な汗がどっと溢れてくる。

「嫌だ……嫌だ。死にたくない」

 情けない。無意識のうちにこのような言葉を発している自分が、とても、醜くい。これなら死んだほうがマシだ。

 でも、死にたくないんだ。

 このような醜態を晒してまで、生きていたいのか。

 慟哭が聞こえる。矛盾しつくした自分の概念の声。

 今まで通り、生きていたい。そんなこと無理に決まっている。死を宣告された時点で、俺の人生は狂いだしたのだから。


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