Unknown Sick-52
「どうした? 恥ずかしいか?」
「違う……」
「何が?」
「こんなの……まーちゃんじゃない!」
「は?」
俺じゃない、だって? くだらない。
「俺を決めるのはお前じゃない、俺自身だ」
「違う!」
「ははっ……くだらねぇ! これが俺なんだ! この俺が嫌なら、二度と近づくんじゃねぇ!」
「まーちゃん……」
「くだらないんだよ。やるつもりもないならさっさと帰れよ、クズ」
「えっ……」
「さっさと帰れって言ってるんだよ、尻軽女」
顔を赤くする藤堂。当然、怒りからくるものだろう。
「ひどい……」
「出て行け!」
藤堂は立ち上がり、泣きながら出て行った。
「……くだらない。俺は俺が決めるんだ。誰にも何も言わせない」
そうさ。俺は何も変わってなんかいない。勝手にあいつが勘違いしているだけだ。
「……そうさ。これでいいんだ」
あれだけ傷つければ、あいつは二度と俺の前には現れない。滅茶苦茶に傷つければ、俺なんかに関わらない。俺なんかに関わっていて、良いことなんて、きっとないから。
そんなことを考えると、ふと、新しい考えがもう一つ浮かぶ。
姉さんも同じだ。もう滅茶苦茶に傷つけてしまおう。そうすれば、あの人が俺に近づくこともない。そうすれば、俺が死んでも悲しむこともない。
「そうだ、そうだよ……」
でも、なんでだろう。とても……悲しい。
翌日、朝早くに目が覚めた。体調は良くない。相変わらずの吐き気、ひどい頭痛。嫌な汗まで出ている。
「ちっ……」
それでも立ち上がり、箪笥からバスタオルを取り出し、浴室へと向かった。シャワーを浴びる前に、洗面所の鏡を見た。
「嘘だろ……」
そこにいたのは、顔面蒼白で、唇がかさかさな、ひどく不細工な男だった。
「これが俺か?」
鏡に問うが、鏡は残酷にも真実を映し続けるだけだった。
「あ……ぐっ」
涙が込み上げてくる。あまりにも自分の姿が醜くて、嫌になる。これなら今までの特徴のない顔の方が、まだ良い。