Unknown Sick-47
葬儀はあっという間に終わった。両親の遺産は二人で分け合い、今住んでいる家もそのまま使うことにした。
「私はお前の高校卒業と同時に、本州に会社を移す。お前はどうするんだ、正和」
「似合わない喋り方だね、姉さん」
「これからは私がお前の保護者だからな。威厳を出さなければならない」
「はいはい」
「で、どうするんだ」
「本州の大学を受けることにするよ」
「わかった」
姉さんは変わった。今までは女らしい部分が多かったが、葬儀が全て終わってから話し方を変え、強い眼差しはより強く、更に強い責任感を持った。
そんな強い美鈴に、再び正和は惹かれてしまった。
◆
「確かに、私は変わった」
相変わらずの穏やかな笑みは、精巧に作られた人形のように思える。
「だが、変わらない人間なんて、この世に存在しないだろう」
「そうだね」
ひゅう、ひゅう、ひゅう。
風が俺を呼ぶ。こちらに来い、飛んで自由になれ、と。
「死ぬ必要なんてない。生きて、私の傍にいてくれ」
「……くだらないよ」
「話してくれ、正和。お前のことを、お前の悩みを。私ができる限り、望みを叶えてあげるから」
あなたに俺の望みなんて一生叶えられない。叶えられてしまえば、あなたは壊れてしまう。狂ってしまう。
「無理だよ。あなたには、何もできない」
「やってみなければわからないだろう」
「それなら、俺を殺してくれよ」
姉の表情が固まる。
「苦しまないように、あなたの手で殺してくれ」
ひゅうひゅうひゅう、ひゅっ、ひゅうひゅう。相変わらずの風の声。
「それは……」
「できるだろう。心臓を何かで突けばいい、ここから俺を落とせばいい、鈍器で思い切り俺の頭を殴ればいい」
「私は……」
「できる限り協力してくれるんだろう? だったら、殺してくれよ」
あなたが殺してくれるのなら、俺は許せるから。あなたに殺されるのなら、俺は、悔やまないから。