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Unknown Sick
【悲恋 恋愛小説】

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Unknown Sick-45

「案外、あっさりと答えは出るものだな」

 生と死に境界なんてない。二つとも同じなんだ。

「こんな汚い世界とも、もうお別れだ」

 そう呟いて、バルコニーの塀を乗り越えようとしたときだった。

「死ぬには早すぎるだろう、正和」

 姉の冷たい声がした。

 振り向くと、帰ってきたときと変わらない姿の姉がいた。

「まだ生きていける。諦めるには早すぎないか?」

「もう死ぬべきだ。諦めるにはちょうどいいよ」

 姉は首を振り、ゆっくりとした歩調でこちらに近づいてくる。

「いつもいつも、手のかかる弟だった。母や父にも笑顔を向けることは少なかったし、私が話しかけても「別に」や「問題ない」、ばっかりだ」

 穏やかな笑顔。

「それなのに、いざ突き放すと寂しそうにする。お前は猫のようだったよ」

 懐かしみながら、俺の前に立つ。

「それは今も変わらないな」

「あなたは変わったよ」

 俺を狂わせるほどに、変わってしまった。











 それは、両親が揃って他界した日だった。

正和と美鈴は自宅で既に休んでいるときに、その事を聞いた。

 二人は急いで身支度し、タクシーを呼んだ。病院に着くまで、美鈴は落ち着かず、左手の親指の爪をしきりに噛み、時計を何度も見ていた。それに対し正和は冷静で、タクシーの中で瞼を閉じていた。

「もっと速く走れませんか?」

 美鈴が運転手に言う。「これ以上は出せませんよ」と運転手はあっさりと答えた。

「落ち着きなよ」

 瞼を閉じていた正和が、美鈴の目を見ずに言った。

「落ち着いていられるわけ無いでしょう!」

 美鈴はつい大声で返してしまった。その態度に正和は小さくため息をついて、肩をすくめた。


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