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Unknown Sick
【悲恋 恋愛小説】

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Unknown Sick-43

 次の日、美鈴は医者と向かい合って話していた。

「本当によろしいのですか?」

「はい、そう決めました」

 医者は大きくため息をつく。

「いつ、症状が悪化してもおかしくないんですよ」

「わかっています。でも、少しだけでもあの子の自由を尊重したいんです」

「わかりました。正直、あなたの会社にはこの病院も助けられていますから、それくらいの我侭は聞きましょう」

 皮肉、ということを美鈴は理解している。しかし、それに動じず、「ありがとうございます」と深く頭を下げた。

「退院手続きを行いましょうか」

 そうして、正和はたった数日の入院生活を終えた。











 俺は姉さんのマンションに住むことになった。必要最低限のものだけを持ってきて、俺は今客間のベッドに倒れている。正直、病院にいた頃のことはほとんど覚えていない。何故、俺は退院できたのか。何故、俺は生きているのか。

 姉さんは仕事に行っている。朝早くに出て行き、夜中の零時過ぎに帰ってくる。帰ってくると必ず、「具合はどうだ」と聞いてくるのももう慣れた。

 窓から差し込む太陽の光が眩しすぎる。カーテンを閉めればそれで問題は解決するのだが、今の俺には無理だ。起き上がることも非常に難しい。食事も姉さんが用意してもらったときだけだ。

 最近、生と死についてよく考える。

生きる、ということは生命活動を継続させること。呼吸をして、心臓を動かし、脳で情報を処理する。

死ぬ、ということは生命活動を停止すること。呼吸を止め、心臓を止め、情報を拒絶する。

しかし、これらに境界などあるのだろうか。生命活動を行っていれば、生きていることになるのだろうか。そんなことない。意識がなく、機械に命を支えられていては、死んでいるのと一緒だ。だが、そんなことない、という意見があるのも事実だ。

いつもの答えに小さくため息をつく。俺は応用力がない。自身が答えを出せば、それを変えることはできない。今まではそれで問題なかった。与えられた課題を解き、用意された解答と同じならば、それは正解だった。

瞼が重くなる。安らかな眠りが、俺を飲み込む。



 目が覚めたのは、外が暗くなったときだった。枕元の携帯電話を片手に取り、時間を確かめる。夜中の零時を少し過ぎた頃だった。

 部屋は真っ暗で、眠りの続きを見ているのではないかと錯覚させる。


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