Unknown Sick-35
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白い部屋。白い壁。白い天井。高いところにある窓。どれもこれも見慣れない。何もかもがわからない。
「正和くん、目が覚めたかい?」
眼鏡をかけた中年の男がいた。白い服を着ている。恐らく医者だろう。
「大丈夫かい?」
「問題、ない」
どうしてこんなところにいるのかを考える。医者がいるということは、病院に間違いない。では、何故病院にいるのか。俺に何があった。
「昨日の夕方に倒れて、病院に運ばれてきたんだ」
作り笑顔を向けられる。この顔を俺は知っている。
「覚えているかい?」
……あぁ、そうだった。俺は昨日、血を吐いて倒れたんだ。藤堂の前で。無様な姿を晒したものだ。
「これから検査なんだけど、受けられるかい?」
五月蝿い奴だ。
「遠慮しておく」
「憎まれ口を叩けるなら問題ないね」
近くに待機していた看護師に指示を出す。
俺の意思などまったく無視して、ベッドから下ろされた。
検査は長かった。血を抜かれたり、息を思いっきり吐いたり、レントゲンを取られたり……もううんざりするほどだった。
昼時などとうに過ぎ、ようやく病室に戻されたときに遅すぎる朝食を与えられた。とは言っても、お粥と少ない味噌汁だ。
病室は個室だった。姉の配慮なのだろうが、もう少し小さくても良かったと思いながらお粥を口に運ぶ。
食べ終わった頃、姉は現れた。表情は暗い。
「やぁ」
こちらから声をかけた。「あぁ」と姉は答えて、ベッドの近くにある椅子に座る。