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Unknown Sick
【悲恋 恋愛小説】

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Unknown Sick-32

 ここは最近藤堂が見つけたらしい。何となく散歩をしていたらいつの間にかここに行き着いたと、バイクに乗っているときに話していた。

 都会と言えるこの辺りで、こんな場所があるのは驚いた。

「すごいでしょ」

「あぁ、凄いな」

 丘の頂上には一本の木があった。その付近には蒲公英が咲いていないので、俺はそこへと足を運ぶ。その後ろを藤堂が付いてくる。

 丘の頂上から見る風景は、侘しいものだった。壮観であるのは確かなのだが、見えるのは高層ビルだった。これが北海道なら山や海が見えて綺麗だったのにな、と心の中で思いながら座り込む。

「ビルしか見えないのは嫌だな」

「うん、それは私も思った」隣に座りながら藤堂は言う。

 俺は煙草に火を点けた。そして、藤堂に、なんでこんな所に連れてきたかを尋ねた。

「私の我侭。それと私の悩みを聞いて欲しかったの」

「俺はお前の悩みを聞いてやるほど暇じゃあない」

「来たついでに聞いてってよ」

 肩をすくめる。それを藤堂は肯定の仕草だと勘違いし、悩みというものを語りだした。

「私には三つ年上のお姉ちゃんがいるの。ううん、いたの。生きていたらまーちゃんと同じ年の。でも、私が四歳の時に雨の森の中で迷って、衰弱して死んじゃったんだ」

 悩みというよりは、死んだ姉の話になっているのはきっと気のせいではない。

「なんかね、最近よく考えるの。お姉ちゃんとは仲が良かったし、喧嘩なんてしたことなかった。私はお姉ちゃんが大好きだった。でも、お葬式のときとか、一周忌とか、どうしても涙が出なかったの。どうしてだと思う?」

 持ってきた携帯灰皿に煙草を押し当てた。正直、俺にそんなこと聞かれても困る。だが、聞かれたからには一応自分の意見を述べる。

「よくある話だが、子供と言うものは死を理解できないんだ。だから、子供の頃のお前は死というものがどういったものかわからなかった。だから泣かなかった。それだけだろ」

「そう……かな」

 腑に落ちない、という態度だ。

「それに、人が死んだからと言って、涙を流す必要なんて存在しない」

 藤堂がこちらを振り向く。いつものように能天気な笑顔でも、悲しんでいるような様子もなかった。その瞳の光は暗く、藤堂らしくなかった。

 煙草を取り出し、火を点ける。

「それで終わりか?」

「……ううん。まだ終わってない」

 藤堂は視線を前方へと移す。その後空を仰ぎ、大きく深呼吸する。


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