Unknown Sick-27
眠気はない。何となく、ベランダに出る。暗い空が俺を出迎える。秋風は冷たい。
何をするわけでもなく、ただ空を眺め続けた。弱い光を星が発している。
死ぬ、ということは誰にでも可能性があることだ。それは交通事故で死ぬかもしれない、誰かに殺されることで死ぬかもしれない。そして、不治の病で死ぬかもしれない。だから、死ぬなんて当たり前で、悲しむ必要なんてない。俺はそう考えていた。だが、それがどうだ。いざ自身に死が近づいてくると、まともではいられない。自分がこんなにも弱い人間だとは考えもしなかった。
ギリギリまで煙草を吸う。最後の煙を吐き出すと、灰皿に押し当てる。リビングに戻ろうとしたとき、隣のベランダから藤堂が出てきた。
「おはよう、まーちゃん」
「あぁ。早いな」
「今日は寝てないから、早いとは違うかも」
「そうか」
会話を切って、リビングに戻る。服を着替え、バイクの鍵を持って玄関に向かう。すると、タイミングを見計らったかのようにチャイムが鳴った。インターフォンを取らずに、そのままドアを開けた。
「何の用だ、藤堂」
「少し話をしようか、まーちゃん」
「俺は出かける。しばらく留守番でもしていろ」
横を通り抜けようとすると、藤堂は道を塞いだ。
「逃げるの?」
「その通りだ」
横を通り抜けようとしたが、藤堂が道を塞ぐ。「ダメ」とだけ言って、俺を押す。
「邪魔だ」
「いいから戻って」
「くだらない」
乱暴に退けるが、藤堂はそれに屈せずに俺の邪魔をする。こいつを暴力でねじ伏せることなど造作もないが、つい数時間前に姉に言われたこともある。ため息をついて、仕方なく藤堂の意思に従う。
「わかった。だが手短にしろ」
「それはまーちゃん次第だよ」
またため息をついた。つくづくくだらない奴だ。
煙草のカートンが尽きたために、買いに行こうと思った矢先にこれだから、本当に参る。
俺はいつもの定位置に座る。それに向かい合うように藤堂が座る。夜更かしに慣れていないのか、目は充血している。前に買った