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Unknown Sick
【悲恋 恋愛小説】

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Unknown Sick-22

「離せ、正和」

 力を込める。今度は、う、と苦しみの声を漏らす。

 なんだ、案外脆いじゃないか。このまま力を込めれば、あんたの首なんてぽっきりと折れそうだ。それともこのまま喉を握りつぶしてやろうか。

「ははは、脆いよ。あんたはこんなにも脆い。俺に首を掴まれたくらいで、身動きも取れないで、呼吸も難しい。ははは、面白いね」

 こんなにも弱くて、小さな存在が俺の姉か。

「はは、は。くだらないな、正和」

「まだ、そんな言葉を吐くのか」

 もう少し、力を入れてやるよ。

「ぐ、は、ははは」

「何がおかしいんだよ……?」

「お前も、同じだ」

「なにが……」

「気に入らない、ことがあれば、力で、物事を、解決しようとする……」

「黙れよ!」

 首を掴みながら、姉を床に倒す。その上に俺は馬乗りになる。その様子は、どこか乱暴な性交に似ている。

 気付くと、姉は涙を流している。痛くて泣いているのか、苦しくて泣いているのか、俺を哀れんで泣いているのか。どれも正しいようで、どれも間違っている気がする。

 姉は相変わらず強気な目で睨み続ける。泣いて充血している目で、強く。それが耐えられない。俺が見透かされているような感じがする。

「どうした、力で、解決、したいのだろう?」

「黙れよ」

「やってみろ、正和。力で、何もかも、解決できるのだと、証明してみせろ」

「黙れって……言っているだろう!」

 左の拳を瞬間で握る。それをそのまま姉めがけて、振り下ろした。





 拳は姉の顔すれすれを通り抜け、リビングのフローリングに拳と同じ大きさの凹みを作り出した。拳にはまだ痛みが残る。

 ドクン、と心臓が一つ大きく鳴く。姉は瞬きすらもせずに、変わらず俺を睨み続ける。

「やめろ。やめろよ。何だよ、あんた」

 姉から離れる。姉は俺と充分な距離が取れると、立ち上がった。

「正和」

「五月蝿い、五月蝿い」

 何だよ、この感じ。苦しい。痛いよ。どうなっちまってんだよ。こんなの初めてだ。

「はっ、はっ、はっ」

 呼吸が続かない。気持ちが落ち着かない。


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