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Unknown Sick
【悲恋 恋愛小説】

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Unknown Sick-21

「睨んでもダメだ。ちゃんと言葉にしてくれないと俺にはわからない」

 ため息をつきながらいつもの場所に腰を下ろす。姉の視線が針のようにちくちくと刺さる。

 昔から姉は、怒ると何も言わずに睨み続ける人だった。何故自分が怒っているのかを相手にわからせるためだろう、と自己分析した姉が言っていた。

 姉を怒らせることは少なかったが、怒らせたときには本当に辛かった。

 こちらは中途半端に休んだせいで眠いんだ。用件は早めに言って欲しい。

 煙草に火を点ける。



 ちっちっちっち。

 ちっちっちっちっち、かち。



 壁の時計は時を刻む。火を点けてから一分も経っていないが、煙草を灰皿に押し当てた。

「あぁ、そうかい。そんなにこの時間に帰ってきたのが気に入らないのかい。あなただって明け方に来たりするだろう。俺だけ咎められる権利はない」

「くだらないな、正和。遅くに帰ってくることには何も問題なんてない。お前が言ったように、それについては私に咎められる権利などないからな」

 くだらないな、という部分をやけに強めに言う。それは俺に対する当てつけだ。

「くだらない、だと」立ち上がる。

 姉がその言葉を吐いたことが、何よりも腹立たしい。

「あぁ。まったくもってくだらない。私がそのような些細なことに怒っているとでも思っているのか」姉も立ち上がる。

 姉は暴言を続ける。

「お前の体は非常に弱っている。些細な生活の変化にすら対応できないだろう。それをお前は理解していない。私が許せないのは、自分の体を大事にしないくだらないお前に対してだ」

 俺を心配してくれるのは、純粋に嬉しい。ただあなたの態度がそれを台無しにしている。そのことに気付いていないあなたの方がもっとくだらないよ。

「くだらないことを考えているな、正和」

 あぁそうさ、くだらないことを考えているよ。あなたをどうやって滅茶苦茶にしてやろうかって考えてたところだ。

「くだらない」

 心臓が強く鳴る。それと同時に体中に怒りが血液と共に駆け巡る。

「五回だ。くだらない、とあんたが俺に言った回数だ」

「それがどうした」

「あんたなんかにそう言われる筋合いはない」

 姉の首を右手で鷲摑みにする。な、と短く声が漏れる。


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