Unknown Sick-20
「今何時だ」
「夜中の二時十九分だよ」
「そうか。迷惑かけたな、藤堂」
「大丈夫なの?」
藤堂の心配そうな表情が見える。「問題ない」と短く答えて、立ち上がる。
「俺の荷物は?」
「全部玄関にあるよ」
まだ心配しているのか、声に張りがない。
大きく背伸びをして、大きく欠伸をする。
「半端に寝たから眠い。ソファーは変えたほうがいい。寝づらいぞ」
「もう知らない」ぷい、と藤堂はそっぽを向く。
少しわざとらしいが、こいつにはこれぐらいのほうがいい。少し皮肉を言ってやるほうが、俺はいつも通りだと伝えられる。
また背伸びして、玄関へと向かう。
玄関に立つと、藤堂に向き直る。
「姉さんには言ってないよな」
「うん」
「そうか。俺は気まぐれでお前をからかいに来た、そういうことだ」
口裏を合わせろと、暗に伝える。それに同意したのか、していないのか、「はいはい」と藤堂は適当に答える。
「姉さんに聞かれてもそう答えろよ」
「わかってるよ。そう言うようにまーちゃんに言われたって言えばいいんでしょ?」
「お前、性格悪いな。何となく雅也に似てきてるぞ」
「そうですか」
くだらない、と小さく呟いて、出て行った。
遅すぎる帰宅を待っていたのは、額に皺を寄せている姉だった。リビングに入った途端にこのような顔を見せられては、なんか疲れてしまう。
何も言わずにリュックから仕事着を取り出し、バスタオルを持って浴室へと向かう。そして洗濯機の中に仕事着を入れる。仕事着は汚れているため、いつも他の服とは分けて洗濯している。
汗まみれになった体を、シャワーは綺麗に流してくれる。少し熱めなのが良い。
十数分後、さっぱりとした状態でリビングに戻る。まだ姉は額に皺を寄せてソファーに座っている。
「言いたいことがあるなら、はっきり言ってくれ。正直この空気は辛い」
鋭い眼光で睨まれる。本気で怒っている姉を見るのは、本当に久しぶりだ。目で語る、とでも言うように何も言わずにこちらを睨み続ける。