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Unknown Sick
【悲恋 恋愛小説】

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Unknown Sick-12

三 前兆





 朝起きて、一番初めに頭に浮かんだ言葉は、最悪だということ。リビングのソファーには寝ている二人。床には散らばった酒の缶、酒の瓶、コップ、食べかけのスナック菓子。さらに、酒がこぼれている。そこを素足で歩いたとき、べたっとした。

 昨日の話。ベランダでの話を終え、リビングに戻った俺と雅也は、不貞腐れる藤堂のご機嫌をとりつつ酒を飲んでいた。バイトで疲れているせいか俺は途中で寝室に向かったが、二人は限界まで飲んでいたようだ。吐瀉物がないのが、せめてもの救いだろう。

 雅也はいびきをたて、藤堂は行儀良く寝ていた。この二人を叩き起こしたい衝動に襲われたが、我慢した。その衝動を掃除に向け、多少の抵抗ということで、なるべく音を立ててやった。

「なんで俺がいつもいつも……」

 大きめに愚痴をこぼす。それでも二人は起きない。これ以上理不尽なことなんてあるだろうか。

 ゴミと思われるものは、しっかり分別しながらゴミ袋に放り込む。べたべたする床は、濡れた雑巾で拭く。まだ入っている酒の缶は、まとめてキッチンに持って行き、中身を流した後にゴミ袋に入れる。ビンに入っているものは蓋を閉め、冷蔵庫に入れる。

 一息ついて、リビングを見渡す。あの二人がいる以外は普段通りだ。いなくなった後に掃除機をかければ完璧だ。

 壁の時計に目を移す。十時十五分くらいだろうか。動いたついでに朝食を作るか。

 今日は味噌汁をまじめに作ろう。それと、面倒くさいが鮭を焼くか。そろそろ食べないと悪くなる。

 冷蔵庫から鮭の切り身を三枚取り、滅多に使わないグリルに置く。火を点け、そして換気扇を回す。ついでにポケットから煙草を取り出し、火を点ける。料理の最中に煙草を吸うと、何かしら危険らしいが、まぁいいだろう。

 鍋に水を入れ、これをコンロに置き、火を点ける。味噌を取り出し、湯が沸くまでシンクに置いておく。

 キッチンに灰皿はないので、空模様を見るついでに、ベランダまで行って煙草の火を消す。見事なほどに曇天だ。いつも思うのだが、このような天気を『どんてん』と読ませるのは、ぴったりだと思う。

 また煙草に火を点ける。そろそろカートンを買いに行かなくては。最近は煙草の減りが早くなっている気がするのは、きっと気のせいではない。

 キッチンに戻ると、鍋から湯気が立ち上っていた。いつもの要領で味噌汁を作る。大して時間をかけずに出来上がる。具は豆腐だ。そう豆腐だけだ。魚は丁度良く焼けている。一応半生でないかを確認した後で、皿に盛る。

 それらをテーブルに持ってきたのと同時に、二人は目を覚ます。

「もう朝飯か」

 雅也が言う。

「まだ眠い……」

 藤堂が言う。

 この二人は狙ってやっているんだろうか。いくらなんでもできすぎている。

「俺たちの分はないのか」

「あるから自分で用意してくれ」

 大きく、とても大きくため息をつきながら言った。


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