Unknown Sick-11
「先に汚れたのはどっちだ。世界か、お前か」
俺の方からかもしれない……か。あの時は、何故そう思ったのだろうか。あまりにも綺麗な夕日のせいだろうか。でも、それは間違っている。俺から汚れたわけではない。だって、この世界が先に汚れたのだから。
「世界、だろうね」
「はっ、答えを変えたか」
呆れているのだろうか。
「ま、いいだろう。答えなんてその時々だしな」
肩をすくめ、大きくため息をつく。
「なんとかなりそうだな、正和」
「なにがさ」
「余命なんて、だよ」小さく言う。
「姉さんか」
雅也は、言うか言わないか少しだけ迷った後、「あぁ」と呟くように言った。
仕方のない姉だ。いや、大きなお世話だよ。でもいいさ。雅也なら、俺を理解しているだろうから。俺の考えも、生き方も、わかっているさ。全ては無理でも、一番わかってくれている。
「さて、話は終わりか」
雅也は立ち上がり、もう戻るぞと俺に伝える。
「雅也はいいのか。何か話があるから来たんじゃないのか」先ほど飲み込んだ言葉を言う。
「……待ってたんだよ」
「なにを」
「もう、いいだろ」
不貞腐れるように言い捨てると、雅也はリビングに戻っていった。
意味もわからず、俺もリビングに戻った。