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閑村の伝統
【その他 官能小説】

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閑村の伝統〜恋人〜-4

「ほら、対馬君も座ろうよ」
「あ、はい」
チョンチョンと、陽子は自分のすぐ隣を指差す。
何となく、宗太は少し距離を開けて座った。
しかし、すぐに陽子に距離を詰められる。
その瞬間、彼女の甘い香りが風にのって漂い、宗太の鼻腔を刺激した。
それだけで、宗太はドキドキしてしまう。
「ねね、対馬君はもうお昼食べた?」
「いや、まだですけど…」
「本当に?よかった〜。あのね、今日お弁当多く作り過ぎちゃったから、よかったら一緒に食べない?」
「いいんですか?」
「もちろん!」

陽子は持ってきていた荷物――――どうやら弁当箱のようだ――――を膝の上に載せて、包みを解いて蓋を開けた。
そこには色とりどりのおかずと、綺麗な三角に握られたオニギリがいくつもあった。
確かにこの量は、1人で食べるには無理かもしれない。
どうやら宗太が呼ばれたのは、残飯要員のようだ。
なぜ他の先生や生徒ではなく自分なのかは腑に落ちないが…
「どれでも好きなのつまんでね」
「あ、はい。じゃあいただきます」
この際なので、遠慮せずいただくことにする。
試しに、おかずの一つを箸でとって食べてみた。
「…どう、かな?」
陽子が不安げに聞いてくる。
その味は、
「…うまい!」
思わず、その言葉が勝手に出ていた。
世辞抜きに、美味しい。
「ああ、よかったあ…安心したよー。じゃあ、私も食べようかな」
宗太の評価を聞いてホッとした後、陽子も弁当をつまみはじめた。


それからも、他の食べ物の評価を聞いてきたり、学校での他愛のない話をしながら食事を続けた。
(先生と生徒ってより、何だかこれって…)
「恋人みたい、だね…」
宗太が思っていたことを、図らずも陽子が口に出した。
その頬は、わずかに赤く染まっている。
(うう…何て反応すればいいんだ…)
「今日は、いきなりこんなところに誘ったりしてごめんね」
突然、陽子がそんなことを言ってきた。
「いや、その…ご、ご飯もご馳走してもらいましたし、得した気分ですよ」
「そう言ってくれるなら助かるな。…あのね、対馬君にここに来てもらった本当の理由は、色々私のことを知って欲しいと思ったからなの」
「先生のこと…ですか?」
「うん…驚くと思うけど、最後まで聞いてね」
それから、陽子はゆっくりと語り出した。


…少女時代、義父に犯されたこと。
彼から逃れるため、資金繰りのために姫巫女になったこと。
その後スポンサーの男に、学費、生活費援助の見返りに自身の身体を長年差し出していたこと。
大学生活での、不運な男女関係。
それら全てを、陽子は包み隠さず宗太に語った。
宗太はその間、じっと黙って聞いていた。
「ひどいでしょ?君の初めてを貰った女は、こんなに汚れてるの」
自嘲気味に陽子が笑う。
「……正直言って、驚きました…今まで聞いたことがない話ばかりで。ちょっと、ショックな気持ちもあります」
戸惑いの声で、宗太がそう言った。
それを聞いて、陽子は顔を下に向ける。
(分かってたはずなのに…こんな事言ったら、相手がどんな反応するのか…)
陽子の目に、涙が浮かぶ。


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