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閑村の伝統
【その他 官能小説】

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閑村の伝統〜恋人〜-3

(あ…)
その姿を見て、宗太は肩を落とす。
(そうだよな…先生と生徒だもんな。俺みたいな子ども、相手にする訳がないか…)
偶発的に関係をもっただけで、勝手に自惚れていただけの独り相撲だったのだ。
陽子の態度をみてそう思い、宗太は顔をうつむかせて小さくため息をこぼす。
だから、気付かなかった。
その後も、陽子が話の合間に、宗太を何度も見ていたことを……



「はっ、はっ、はっ!」
昼休みになって、充と麗子の昼食の誘いを断り、宗太は階段を全力で駆け上がっていた。
目的の場所は屋上。
そこで、陽子が待っているはずなのだ。

…事の始まりは、陽子の担当する理科の授業中でのこと。
テキストに載っていたある設問をみんなに解かせていたとき、陽子は生徒の進行具合を歩いて見て回っていた。
理系タイプではない宗太が、苦戦しながら問題を解いていたとき、陽子が宗太の側に近付いてきた。
そして、
「え…?」
陽子は、一枚の紙片を他の生徒に見られないように宗太の机に置いていった。
慌てて陽子を見るが、彼女は既に宗太の側を離れており、こちらを気にする様子もない。
いったい何なんだと思いつつも、宗太はたたまれた紙片を開いた。
そこには、
『昼休みになったら屋上に来てください』
ただその一文だけが書いてあった。
これは、何の誘いなのだろうか…
陽子の方から呼び出しを受けて、嬉しい気持ちもあるが、今までの素っ気ない態度を思い出すと、複雑な気分になる。
(もしかして、祭りのことを口止めされるとか…?最悪、もう近付かないで!とか言われるのかも…)
悪い方向にどんどん考えてしまう。
再び陽子を見るが、やはりいつも通り、何の変化もない。
(ああ…悪い予感が的中しそう…)
宗太は一層暗い気分になりながら、授業に臨んだ。
…それから昼休みになって、宗太は陽子の意図が気になって仕方なく、走って屋上を目指した。
そして、現在に戻る。



階段を登り終わり、屋上へのドアが見えた。
「あれ…?」
そこに、陽子の姿はない。
「もしかして、もう屋上に…」
宗太はドアノブを握る。
だが、扉は施錠されており、ドアノブを回しても扉は開かなかった。
(…よく考えたら、屋上って立ち入り禁止だから入れる訳ないじゃん…じゃあ、これって…)
騙された?いや、からかわれたのだろうか?そんなことを思い、陰鬱な気持ちになる。
そこに、
「あれ?もう来てたんだ。早いね」
陽子が階段を登ってきた。
手には何か荷物を持っている。
「先生…」
「ああ、鍵閉まってるよね。待って、今開けるから」
陽子はニッコリと笑うと、懐から屋上の鍵を取り出し、鍵穴にさしこんで扉を開けた。
宗太は陽子の後を追って屋上へ出る。
「へえー。初めて来たけど、屋上ってやっぱり殺風景だねえ」
陽子が周りを見渡しながらそんなことを言う。
いつもの明るい調子だ。
てっきり重たい空気になるかと思っていた宗太は、何だか肩透かしをくらった。
もちろん、いい意味でだが。
陽子は手近にあったフェンスに背を預けて座り込んだ。


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