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閑村の伝統
【その他 官能小説】

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閑村の伝統〜恋人〜-5

やっぱり言わなければよかったかな…そんなことを陽子が思った時、
「でも…」
宗太は真剣な瞳で、
「でも、汚れてるなんて思いませんよ。絶対に、思いません」
慰めなんかではなく、本心で言った。
抱かれたくもない男に犯され、それでも生きる上では関係を断ち切ることもできなくて。
それでも懸命に毎日を生きて、やっと自立して……
そんな人を汚らわしいなどと、思うはずがない。
「……ありがとう」
宗太が本心で言ってくれたことに気付いたのか、陽子は涙目のまま薄く笑っていた。
「ねえ、何で私がこの秘密を君にしたと思う?」
「え?うーん…誰かに聞いてほしかったから…ですか?」
「…ああ、確かにそれもちょっとあるかな。でもはずれ。こんな話、誰にでもできるものじゃないよ」
「じゃあ、ちょっと分かんないです」
宗太はあっさり降参した。
「それじゃあ正解。答えは、私が対馬君のことを好きだからよ」
「……へ?」
あまりにあっさりと、陽子はそう言った。
宗太は何を言われたのか、意味が分からない。いや、分かるのだが、頭の理解が追い付かない。
(先生が、俺を…?)
「…冗談?」
「違うよ。本当は前からいいなって思ってたんだけど、昨日の夜抱かれた時に、骨抜きにされちゃった」
テヘへ、と照れ笑いを浮かべる陽子。
宗太は思いっきり呆然としていた。
今陽子が言った『好き』は、生徒として『好き』ということではなく、1人の、対馬宗太という男が『好き』という意味。

LIKEではなくLOVE。

口をパクパクとさせて混乱している宗太を見て、陽子は真剣な表情を浮かべ、
「さっき言った通り、私の過去はひどいでしょ?だから、ちゃんと全部話した上で告白しないと、フェアじゃないと思ったの」
宗太の目を見て、はっきりと言う。
その姿を見て、彼女の真剣な気持ちは宗太に伝わった。自分の秘密まで語ってくれたのだ。偽りのない気持ちだろう。
ただ…
「俺たち、教師と生徒ですよ」
一般常識から言ってもこの関係の恋愛はご法度だ。ばれたら当然退職、退学だろう。
「うん、分かってる。でも、そんなの理由にならないくらい、対馬君の事好きになっちゃったの。もちろん周りには秘密にしなきゃだから、デートとかも大変だけど…でもでもっ、そのぶんいっぱい愛するし、いっぱい尽くすし、何でも言う事聞くしっ!だから、えと…その…」
陽子は答えに怯えたような感じで、
「私の、恋人になってくれませんか?」
そう言った。
正真正銘の告白。
何気に人生で初めての告白を受けた。
それが担任の先生からという体験は、世界中でもなかなかないだろう。

だが、答えを考える必要などない。
もう、とっくに決まっている。
「…はい。俺も、先生のこと好きですから」
結局宗太も陽子と全く同じだった。
前から憧れてて、姫巫女祭の夜に、一気に骨抜きにされてしまった。
それこそ、先に陽子が言った、教師と生徒という立場さえ関係ないと思える程に。
「…本当に?」
パチパチと目を大きく開いて瞬きをする陽子。
宗太の返事が信じられないようだ。
「本当です」
「…今日、エイプリルフールじゃないよ?」
「嘘じゃないです」
「私、君の先生だよ?」
「はい、知ってます」
よどみなく陽子の言葉に答える宗太。
すると、
「…う、うう…グス…」
いきなり、陽子が泣き出した。


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